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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
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1999年6月15日発行 配信数982
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出版社研究 第2回 |
去る5月15日、セーラー出版株式会社の小川悦子社長をお迎えして、やまねこ翻訳クラブ主催の座談会が行われた。今回は、当日の小川社長のお話をもとに、同社の概要や出版傾向などを紹介する。 |
★概要 〜手探りのスタートから15年目を迎えた絵本出版社〜
セーラー出版は、1985年2月、セーラー万年筆の関連会社として設立された。その前年に、欧米で人気の「スマーフ」をキャラクターとした文具を売り出していたセーラー万年筆が、文具の売上アップと企業イメージの向上をはかるため、「スマーフ」の翻訳絵本の出版を決めたのがきっかけだ。担当者として選ばれたのは、当時秘書係長だった小川悦子さん(現セーラー出版社長)。社内報の編集に20年間携わってきたことやプライベートで小説の同人誌活動を行っていたことを買われての起用だった。
絵本の出版に関してはゼロからのスタートだったが、小川社長は集中的に数多くの絵本を読んで勉強した。また幸いなことに、同人誌仲間が出版社、取次会社、図書館などにおり、アドバイスや協力を得ることもできた。こうして出版された『スマーフ物語』全15巻は、期待していたほどの売れ行きとはならなかったものの、キャラクター文具の売上に貢献し、当初の目的を達成することに成功した。その後、「文具も出版も同じ文化を担う産業。子どもたちに良質の絵本を提供していくことは意義ある活動だ」という親会社の意向により、絵本の出版を続けることとなった。
セーラー出版が「スマーフ」の次に出す絵本を探していたとき、小川社長が東京日本橋の丸善で行われた「世界の絵本展」で見つけたのが『ベビーライオンフーゴ』(ヨゼフ・ウィルコン絵/ヘルマン・メールス文)の原書だった。やわらかく深みのある絵に強く魅かれ、出版を決意。この絵本との出会いが以後のセーラー出版の方向を決めたという。現在、セーラー出版から出ているウィルコンの絵本は、『月がくれたきんか』『すきすきだいすき』など17冊。ウィリアム・スタイグ、アニタ・ローベル、マックス・ベルジュイスらとともに、同社の人気絵本作家のひとりだ。
★出版傾向 〜読後に幸福感・充足感が得られる絵本を〜
14年間で出版した翻訳絵本は130冊以上。とくに決まった傾向があるわけではないが、ウィルコン、スタイグ、ローベルなど、小川社長が好きになった作家の絵本を続けて出版することによって、自然とセーラー出版のカラーが出てきたという。出版する絵本を選ぶ際には、「自分が本当に好きかどうか」を大切にしているとのこと。「絵が美しいもの、ユーモアのあるもの、そして読んだあとに幸福感や充足感が得られる絵本が好きですね」と小川社長。また、絵の好みの違う高橋啓介さん(現編集長)の入社によって、セーラー出版の絵本に厚みが生まれたそうだ。
97年10月には日本人作家による初のオリジナル絵本『しましまパーティー』(野村なおこ作)を出版。これからは翻訳絵本だけでなく、オリジナル絵本も少しずつ手がけていきたいとのこと。
【こぼれ話――翻訳者との出会い】 絵本との出会い、人との出会い。セーラー出版には数多くの運命的な出会いがあった。翻訳者との出会いもそのうちのひとつだ。『ベビーライオンフーゴ』を翻訳したいずみちほこさんは、小川社長の知人の娘さんで、当時は大学生だった。たまたまお願いした下訳がよかったので、翻訳者としてデビューしてもらうことになったとのこと。『毛皮ひめ』などアニタ・ローベルの絵本の翻訳者である松井るり子さんとは、松井さんから届いた『ゆうかんなアイリーン』(スタイグ作)の愛読者カードがきっかけで交流が始まったそうだ。 |
★出版までの過程 〜原書の雰囲気を大切に〜
セーラー出版のスタッフは小川社長を含めて3名。編集から営業まで、全員で何もかもこなしている。
原書はエージェントから紹介してもらうことがほとんどだが、スタッフが洋書売り場などで見つけてくる場合もある。こうした原書を社内で検討し、出版するかどうかを決めたら、その本の雰囲気や性格にもっとも合うと思われる人に翻訳を依頼する。訳稿は担当者と翻訳者で何度も読み合い、ていねいに作り上げていく。出版する絵本を原書の雰囲気により近づけるために、紙の質や文字部分の書体などもなるべく原書に似たものを使用するとのこと。
持ち込みは受け付けているが、昨年度の出版点数は5点と、エージェントから紹介された原書も厳しく絞り込んでいる状態なので、出版にまで至るのはなかなか難しい。しかし、数は少ないが、持ち込みによって出版された絵本もある。持ち込んだ人のその絵本に対する愛情と熱意が編集者を動かしたのだそうだ。
☆持ち込みによって出版された本
『バルツとベッティーナの空とぶベッド』 ジャクリーヌ・ブラス絵 エリカ・ブリュールマン・イェリクリン文/森山恵美訳
『ちいさなちゃいろいうし』 ビジョー・ル・トール作/酒井公子訳
【小川社長から翻訳家志望のみなさんへ】 絵本の文章は詩に近いものなので、翻訳には創造力・想像力が必要です。外国語でつかみとった世界を、豊かな日本語を駆使して再構築してください。自分が本当に好きになった作品に取り組み、持ち込みをするときはその作品にふさわしい出版社を探すとよいでしょう。あきらめずに、長く学習を続けてください。 |
★近刊情報 ◎『ストライプ──たいへん! しまもようになっちゃった──』 みんなにどう思われるかをいつも気にしている女の子、カミラ。ある日、カミラの体がしまもようになってしまって、さあたいへん! 6月下旬刊行予定。 ◎『クレリア──えだのうえでおきたできごと──』 『お月さまってどんなあじ』の作者による新作絵本。のびちぢみ自由自在のふしぎな生きものクレリアの物語。7月下旬刊行予定。 |
セーラー出版株式会社 住所 〒135-0001 東京都江東区毛利2-10-18 |
(取材・構成 生方頼子)
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コンクール/展示会/セミナー・講演会情報 |
◎山形県遊学館「第9回外国絵本翻訳コンクール」 | |
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課 題: |
"PUDDLES" by Jonathan London / G. Brian Karas "Smudge" by Julie Sykes / Jane Chapman |
締 切: | 1999年9月30日(当日消印有効) |
応 募: | 課題絵本(全国の主要書店で販売)に添付されている応募要項を参照のこと |
問合先: |
山形県生涯学習センター(023-625-6411) 山形県立図書館(023-631-2523) |
参 考: | http://www.yugakukan.or.jp/ |
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◎国立民族学博物館「子供たちのみた地球――国連子供環境ポスター原画コレクション」 | |
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所在地: | 大阪府吹田市千里万博公園10-1 |
電 話: | 06-6876-2151 |
会 期: | 平成11年8月24日まで |
休館日: | 水曜日 |
入場料: | 大人420円 高校生250円 中・小学生110円 |
内 容: | 1991年以来行われている国連環境ポスターコンテスト作品の原画展。同博物館では、各国の民族に関する豊富な資料を見ることもできる。 |
◎沼田絵本美術館「ニッサン童話と絵本のグランプリ大賞受賞作品展」 | |
所在地: | 東京都世田谷区上用賀1-25-20 |
電 話: | 03-3708-8200 |
会 期: | 平成11年6月20日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 大人800円 高・中学生600円(飲み物付き) |
内 容: | アマチュアを対象に創作童話と絵本を募集するニッサングランプリ。今回は、第14回に入賞を果たした「リリ」他2編の全物語を展示。 |
(瀬尾友子)
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◎柳田邦男講演会「読むことは生きること〜人生後半にもう一度絵本・物語を〜」 | |
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場 所: | 高槻現代劇場(大阪府高槻市野見町2-33)中ホール |
日 時: | 平成11年6月23日(水)18:30〜 |
参加費: | 800円(前売 500円) |
内 容: | 『マッハの恐怖』『犠牲(サクリファイス)』等で知られるノンフィクション作家の柳田邦男氏が絵本について講演する。 |
問合せ: | 絵本のまち高槻推進協議会事務局(TEL 0726-94-1402〔佐々木悟郎方〕) |
◎クレヨンハウス(東京・大阪)「絵本の翻訳は簡単か」 | |
講 師: | 青山南 |
場 所: |
東京 港区北青山3-8-15 クレヨンハウス 大阪 吹田市江ノ木町5-3 クレヨンハウス |
日 時: |
東京 平成11年7月3日(土)16:00-17:30(開場は15:30) 大阪 平成11年7月10日(土)16:00-17:30(開場は15:30) |
参加費: | 会員は無料(年会費に含まれる) 非会員は2,500円 |
内 容: | 『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話』『翻訳家という楽天家たち』等で知られる翻訳家・エッセイストの青山南氏の講演会。 |
申 込: |
クレヨンハウスへ(東京03-3406-6492 大阪06-6330-8071) ※非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場店頭にて販売される当日券を購入。全席自由。会員が定員に達した場合は立ち見になることもあり。 |
◎山口マオの木版画教室+おはなし会 | |
場 所: | 絵本とガラスペンの店「猫の事務所」(東京都練馬区栄町46-2) |
日 時: | 平成11年6月26日(土)または平成11年6月27日(日)11:00-17:30 |
参加費: | 8,000円(教材費込、おみやげ付) |
定 員: | 各日7名(要予約) |
内 容: | アーティストの山口マオ氏指導による木版画の製作。 |
申 込: | 猫の事務所(TEL 03-3948-3550)まで。 |
(中野伊都子)
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お菓子の旅 第5回 |
☆ロックケーキ Rock Cake☆
It was as good a feast as Captain Flint had been able to get sent from Rio. For example, there were ices, strawberry ones. There were parkins and bath buns and rock cakes and ginger-nuts and chocolate biscuits. Arthur Ransome "SWALLOWS AND AMAZONS" |
ランサムは『ツバメ号とアマゾン号』(岩田欣三・神宮輝夫訳/岩波書店)から始まるシリーズ全12冊の中で、子どもたちが長い休みを存分に楽しむ姿を生き生きと描きました。『ツバメ号とアマゾン号』は、ウォーカー家の4人きょうだいが、子どもたちだけで無人島でキャンプをしたり、帆船「ツバメ号」をのりまわしたりして、夏休みを謳歌する物語です。途中、海賊旗を掲げる「アマゾン号」のブラケット姉妹や、そのおじさんの「フリント船長」と出会って、ウォーカーきょうだいは自分たちの冒険の世界をさらに広げていきました。
最初は敵同士だったツバメ号とアマゾン号。さまざまな出来事を経て、同盟を組み、フリント船長の屋形船と戦って勝利します。フリント船長は屋形船で和睦のパーティーを開いてくれました。そのとき、出てきたごちそうの一つが、ロックケーキでした。
ロックケーキは、ごつごつした岩(rock)のような形のクッキー。小粒でさっぱりした甘みのカランツが入っています。カランツ(currants)は、ここでは干し山ブドウのこと。手に入らないときは、ふつうの干しブドウでも代用可です。
見た目も味も素朴なロックケーキ。楽しい夏休みを思い出しながら、あなたも作ってみませんか?
*-* ロックケーキの作り方 *-* |
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*-* 参考文献 *-*
『イギリスのお菓子II』北野佐久子文/写真(ソニー・マガジンズ)
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(田中亜希子/森久里子)
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やまねこ翻訳クラブ(会員数143名)
やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。
―― 99年6〜7月の主な活動 ――
海外児童文学賞受賞作読破マラソン
"Ella Enchanted" by Gail Carson Levine シノプシス勉強会
出版翻訳ネットワークのホームページに新刊情報を掲載しませんか?
http://www.litrans.net/maplestreet/
●編集後記●
今月号から、情報編と書評編に分けてお届けすることになりました。これに伴い、編集人もふたりになります。今後ともよろしくお願いいたします。(み)
発 行: | NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム・やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 小野仙内(文芸翻訳フォーラム・マネージャー) |
編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ・スタッフ) |
企 画: | 河まこ キャトル くるり Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ |
協 力: | ながさわくにお、きら、HAROU、わんちゅく |
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