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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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出版社研究 第15回 |
―― PHP研究所 ――
イギリスで今いちばんホットな絵本作家、ローレン・チャイルドの初邦訳作品があるかと思えば、台湾で児童文学賞を受賞した絵本あり、シックな色合いのオランダの絵本あり……。PHP研究所児童書出版部のラインナップは、色とりどりで個性豊かだ。そのエネルギーの源はどこにあるのか? 今注目の同社を訪ね、編集長の後藤淳一さんと編集の大久保徳久子さんにお話をうかがった。 |
■PHP研究所とは
PHP研究所は、1946年、松下電器の創業者松下幸之助氏によって設立された。PHPとは、Peace and Happiness through Prosperity という英語の頭文字をとったもの。「繁栄によって平和と幸福を」という意味をこめた社名である。翌1947年に月刊誌「PHP」を創刊。以後、着々と出版活動を展開し、今では年間約400点もの書籍を出版するようになった。
PHPが継続的に児童書を発刊しはじめたのが1976年。ずっと日本の創作物だけを扱っていたが、5年ほど前からは海外児童書の翻訳出版も手がけるようになった。同部から1年間に出る約40点の児童書のうち、翻訳書は6点(2001年)と決して多くはない。だが、みずからも海外作品を読んで育ってきた若手編集者たちが、「日本の作品とはまた違ったおもしろさを伝えたい」と熱意をもって取り組んでいるだけに、選ばれた作品には並々ならぬ愛情がこもっている。
■おもしろい、だから出したい! 〜企画本位で生まれた個性派ラインナップ〜
翻訳書を本格的に出してゆく上で、大きな起爆剤になったのが、『マイロのふしぎな冒険』(ノートン・ジャスター作/斉藤健一訳)だ。原書は、編集者のひとりが個人的に知っていた本で、アメリカで長年にわたって読みつがれ、百万部以上売れているロングセラー。「こんなにおもしろい本が日本で出ていないなんておかしい」と、出版にこぎつけた。その過程であれこれリサーチを進めるうちに、ダグラス・エバンス(『エレベーター・ファミリー』他/清水奈緒子訳)などのユニークな作品にも出会った。こうして、ひとつの仕事がまたべつの仕事へとつながっていった。
翻訳出版にかけては後発ゆえ、情報収集や印刷方法など、勉強途中のことも数多い。だが既定の路線がない分、一本一本を企画本位で作っていける強みもあると、編集長の後藤さんは胸を張る。訳者からの紹介や新人による持ち込みは、大切な情報源だ。台湾の絵本『いすになった木』(梁淑玲作/宝迫典子訳)は、訳者の宝迫さんからEメールで紹介されたもの。宝迫さんとはまったく面識がなかったが、台湾で賞を取った作品だったこともあり、すんなりと出版が決まった。わがままな木が、やさしい言葉をかけられて人の役に立つ木に成長するというお話が、PHPのカラーに合っていたことも決め手になった。また、『おおきくなりたいちびろばくん』(リンデルト・クロムハウト作/アンネマリー・ファン・ハーリンゲン絵/野坂悦子訳)など一連のオランダ作品は、一般書の翻訳でつき合いのあった訳者の野坂さんからの紹介。絵の美しさが大きな魅力だ。
足で稼いだ出会いもあった。今年出版予定の『ロリー・ポリー(仮題)』は、知人から紹介されて大いに気にいっていたところ、たまたま立ち寄ったエージェントの本棚で出くわした。ちょうどエージェントと、この本に興味を持つ日本の出版各社とのあいだで版権交渉が始まろうとしていたところで、PHPも即座に参加し、首尾よく取得に成功。タイミングを逸していれば、取れないところだった。イギリスの人気絵本作家ローレン・チャイルドの『わたしペットをかいたいの』(中川ひろたか訳)も、やはりエージェントの棚で見つけたもの。少し前にほかのエージェントからチャイルドの別作品を紹介され、絵に惚れ込みながらも、対象年齢の設定が難しくてあきらめたところだったので、さっそく飛びついたという。
■出版不況時代を元気に乗り切る
こうして企画を第一に考えるかたわら、後藤さんの頭の中には、児童書業界を襲う不況と少子化の波に対抗するための戦略も浮かんでいる。「書籍全体は、96年から不況に陥っていますが、児童書の売り上げは90年ごろから下がりだしています。これは、80年を頂点として1歳から15歳までの人口が減りつづけているためです。少子化に歯止めがかかる見込みがない以上、これからは輸出も視野に入れる必要があるでしょう。特にアジアの国々は日本の絵本を一所懸命買いつけていますから、海外に印刷拠点をもうけて、アジア向けに絵本を印刷するといったグローバル化を、積極的に考えていかなくてはならないと思います」
一方で、ブームとはいえ、「癒し系」絵本で販路拡大をはかるといったやり方には興味がないと、後藤さんも大久保さんも口をそろえる。「子どもの本に『癒し系』なんてあり得ないと思うんです。子どもの場合、今読んでいる本がおもしろければ、それ自体が癒しになるんですから」(大久保さん)。「子どもにむかって、『疲れているんだから、頑張らなくていい。そこそこで十分』などと慰める向きもありますが、本来、自分の可能性は際限なくある、と思うのが子どもでしょう。『そこそこ』なんて、子どもに失礼ですよ」(後藤さん)。
基本はあくまでも子どものための「楽しくてあったかい本」。子どもの持つエネルギーに全幅の信頼をおき、一冊一冊との出会いを大切にして本作りを進める。これこそがPHPの持つ「元気」の源なのだ。
【翻訳学習者のみなさんへ】 ☆先にも言ったように、うちは持ち込みを否定しません。でも児童書の作品を読まずに持ち込む人がけっこういますから、最低限、児童書とは何かをわかった上でトライしてほしいですね。また、できれば基本的な数字は調べてほしいと思います。本国でどれくらい売れたか、その作者の作品が日本でどの程度出ているか。主観は大切ですが、基本的な事実がわかればより安心して話を聞くことができます。(後藤さん) ☆わたしは子どものころ、プリョイセンの「スプーンおばさん」シリーズや、プロブストの「カロリーヌ」シリーズを読んで育ちました。中でもカロリーヌは大好きで、復刊が決まったときにはうれし涙が出そうでした(笑)。だから、こんなに楽しい世界があるんだよということを、翻訳書を通じてぜひ子どもたちに伝えたい。その橋渡しはひとりではできませんから、翻訳者の方に助けてもらえたらうれしいですね。(大久保さん) |
PHP研究所 住 所 〒102-8331 東京都千代田区三番町3番地10 |
(取材・文/内藤文子)
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展示会/セミナー・講演会情報 |
―― 展示会情報 ――
◎伊勢丹美術館「いわさきちひろと日本の絵本画家たち」 | |
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所在地: | 東京都新宿区新宿3-14-1伊勢丹新宿店新館8階 |
電 話: | 03-3352-1111 |
会 期: | 平成14年3月5日まで |
休館日: | 2月20日(水) |
入場料: | 一般800円 大学生・高校生500円 中学生・小学生無料 |
内 容: | 1977年に設立された「ちひろ美術館」のコレクションより、13人の絵本画家の作品約180点を展示。 |
参 考: | http://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/shinjyuku/news/art/index.jsp |
◎滋賀県立近代美術館「風の画家中島潔の世界展」 | |
所在地: | 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1(文化ゾーン内) |
電 話: | 077-543-2111 |
会 期: | 平成14年2月23日から3月31日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般900円 大学生・高校生650円 中学生・小学生450円 |
内 容: | ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞をはじめとする数々の賞を受賞し、国際的に活躍を続けている中島潔の原画展。 |
参 考: | http://www.shiga-kinbi.jp/ |
(瀬尾友子)
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―― セミナー・講演会情報 ――
◎メリーゴーランド LECTURE 2001「長田弘・山田太一 講演と対談」 | |
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講 師: |
長田 弘(詩人) 山田太一(作家、脚本家) |
場 所: | メリーゴーランド(三重県四日市市松本3-9-6)3階 ホール |
日 時: | 平成14年2月24日(日)14:00〜 |
参加費: | 前売 4,000円 当日 4,500円 |
定 員: | 150名 |
問合せ: | 子どもの本専門店「メリーゴーランド」(TEL 0593-51-8156) |
◎徳島県立図書館 児童文学講演会 | |
講 師: | 工藤直子(詩人) |
場 所: | 文化の森(徳島市八万町向寺山)イベントホール |
日 時: | 平成14年3月1日(金)14:00〜16:00 |
参加費: | 無料 |
定 員: | 200名 |
内 容: | 『のはらうた』や『てつがくのライオン』などでおなじみの工藤氏による楽しいお話。 |
申 込: | 徳島県立図書館(八万町向寺山 文化の森総合公園内 TEL 088-668-3500)まで、電話または来館のうえ申し込む。 |
参 考: | http://www.library.tokushima-ec.ed.jp/ |
◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「いまどきの、こどもと、家庭と、学校2002」 | |
講 師: | 重松清(作家) |
場 所: | クレヨンハウス東京店(東京都港区北青山3-8-15 TEL 03-3406-6492) |
日 時: | 平成14年3月9日(土)16:00〜17:30(15:30開場) |
参加費: | 非会員 2,500円 会員は無料(年会費に含まれる) |
定 員: | 150名 |
内 容: | 自分の小説にはいつも〈いまどき〉となんらかの形でかかわっていてほしいという重松氏。2002年の〈いまどき〉を考える。 |
その他: | 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。大阪会場は3月23日(土)。詳細は大阪店(TEL 06-6330-8071)まで。 |
参 考: | http://www.crayonhouse.co.jp/home/index.html |
◎東京子ども図書館 講演会「『赤毛のアン』とモンゴメリ、そして日本」 | |
講 師: | 伊澤佑子(宮城学院女子大学教授) |
場 所: | 東京子ども図書館(〒165-0023 東京都中野区江原町1-19-10) |
日 時: | 平成14年3月23日(土)14:00〜16:00 |
会 費: | 一般 2,000円 賛助会員 1,500円 |
定 員: | 50名 |
内 容: | 『赤毛のアン』の作者、モンゴメリの生涯を新しい切り口で紹介する。 |
申 込: | 往復はがきに(1)希望する講演・講座名 (2)氏名 (3)住所(郵便番号も)(4)電話番号(昼の連絡先)(5)賛助会員か否かを記入して、東京子ども図書館まで。1人1枚に限る。2月22日(金)締切。 |
詳 細: | http://www.litrans.net/maplestreet/tklib/index.htm |
(中野伊都子)
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お菓子の旅 第17回 |
―― クマ絶賛のチョコレートは……?(バレンタインデー) ――
"Oh, Mr. Bear! Chocolate covered ants. My very favorites!" Text by Eve Bunting Illustrations by Jan Brett |
この号が出るのは、2月14日の翌日です。みなさんはチョコレートを贈ったり、贈られたりしましたか? 今回はバレンタインデーにまつわる絵本をご紹介しましょう。その名も "The Valentine Bears"。毎年、冬眠をするクマ夫婦が、初めて「起きて」過ごすバレンタインデーを描いた作品です。細密なペン画に赤とオークルの2色をほどこした美しい絵も、クマの生態をからめつつ、ユーモラスに暖かく愛を語っているところも、「はー、いいなあ」と思わずため息。
日本ではバレンタインデーというと、女性から愛を打ち明け、チョコレートを贈ることが定着していますね。欧米では、女性に限らず恋人や家族、親しい者同士がカードや贈り物を取り交わすのが一般的のようです。この習俗のはじまりは、古代ローマの豊穣祈願祭ルペルカリアにあるとも、この日から鳥がつがい始めるという西欧の民間伝承にもとづくともいわれています。また、「バレンタインデー」の名前の由来は諸説ありますが、2月14日が、兵士たちの結婚のために力を尽くし処刑された聖バレンチノ(英語読みでバレンタイン)の命日だから、という説がよく挙げられます。
ここでチョコレートの歴史を少し。カカオは紀元前2000年ごろからすでに、中南米で「神々の食べ物」として栽培されていました。カカオの種子をすりつぶし、水やトウモロコシの粉を加えた飲み物が、不老長寿や疲労回復の秘薬として飲まれていたのです。この「にがい水」(ナワ族のことばで xocoatl)が、16世紀にスペインに持ち込まれ、王に献上されたとき、「チョコレート」という甘い飲み物に変えられました。固形のチョコレートができるのは、それから300年以上もあとのことです。
さて、最後にレシピをご案内……と思ったら、絵本に登場するチョコレートは上の原文の通り。ということで、クマ絶賛の品ではありますが、別のものにしますね。
*-* 生チョコの作り方 *-*
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★参考文献 |
(田中亜希子/森久里子)
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読者の広場 |
―― 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ――
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●編集後記●
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発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 大塚典子(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
編集人: | 林さかな(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
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