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月刊児童文学翻訳

─2003年3月号(No. 48 情報編)─

※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:[email protected]
2003年3月15日発行 配信数 2,580


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎プロに訊く
第22回 西郷容子さん(翻訳家)

◎展示会情報
大阪府立大型児童館ビッグバン「夢ふくらむ〈おもしろ絵本大集合〉」他

◎セミナー・講演会情報
津田塾会・JBBY 河合隼雄講演会「いま 子どもの本にできること」他

◎世界の児童文学賞
第22回  コレッタ・スコット・キング賞

◎読者の広場
海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

 




プロに訊く 第22回

―― 西郷容子さん(翻訳家) ――


 今月は、世界の様々な国で出版され人気を博している「レッドウォール伝説」シリーズの翻訳者、西郷容子さんに登場していただきます。レッドウォールのことや翻訳のことについて、いろいろなお話をうかがうことができました。お忙しいなか、メールと電話で丁寧に質問にこたえてくださった西郷さんに、心より感謝いたします。

【西郷容子(さいごう ようこ)さん】
 国際基督教大学卒業。ICU博物館・湯浅八郎記念館、(財)日本野鳥の会などで働いた経験があり、翻訳作品には自然と関わりの深いものが多い。主な訳書に『オ−デュボンの自然史』(宝島社)、『熱帯林破壊と日本の木材貿易…世界自然保護基金(WWF)レポート』(築地書館)、『狼とくらした少女ジュリー』(徳間書店)、絵本『ゆめのおはなし』(徳間書店)など。「レッドウォール伝説」シリーズ(徳間書店)では、1999年出版の1冊目『勇者の剣』から翻訳に携わっている(注)。

(注)シリーズ3冊目『小さな戦士マッティメオ』は、本誌今月号書評編「注目の本」にレビュー掲載

【西郷容子さん作品リスト】
【西郷容子さんインタビュー ロングバージョン】

 

■ 「レッドウォール伝説」シリーズについて ■



★先月出版された『小さな戦士マッティメオ』を中心に、シリーズの内容を簡単に紹介していただけますか。 『小さな戦士マッティメオ』表紙


 『小さな戦士マッティメオ』は、ネズミやアナグマなどの動物たちが活躍するファンタジー、「レッドウォール伝説」シリーズの3冊目です(本国イギリスでは、既にシリーズ15冊目まで発表されています)。シリーズ1冊目は「勇者の剣」を発見したマサイアスの物語、2冊目はそれよりはるかに時代をさかのぼった、レッドウォール修道院ができる前の出来事と、剣の真の持ち主であるマーティンの物語でした。そしてこの3冊目では、マサイアスの息子マッティメオが主人公として登場しています。今回は、そのマッティメオをはじめとする修道院の子どもたちが悪の一味にさらわれるという、これまでにもまして辛い幕開けとなります。苦難の旅を続けることになった子どもたちは、何を思いどう行動するのでしょう。マサイアスと仲間たちは、悪の手から無事に子どもたちを奪い返すことができるでしょうか。それぞれの生きものたちが個性豊かに描かれ、すみずみまで楽しめる物語にしあがっています。


★このシリーズとは、どのように出会われたのですか。また、最初に読んだ時の印象はいかがでしたか。

 編集の方から面白い物語があると勧められて読みました。原作者は物語を朗読するのが大好きということは後で知ったのですが、最初に読んだときは文章と物語のテンポの良さに感心しました。出てくる生きものの数がとても多く、それぞれのしゃべり方や性格を描き分けるのが、後々の宿題になりそうだと思ったのを覚えています。


★シリーズを翻訳される上で大変だった点・楽しまれた点などを教えてください。

 どの本にも、名前だけ登場するものも含めると60匹近い生きものが登場します。ですから、登場動物表をつくって訳のおぼえにしました。とにかくぎっしり字をつめて600ページ以上にもなる原稿ですから、こういう表でもないと、前に出てきたのはどこだったか、捜すのがとても大変なんです。

 毎回、生きものたちの様子や暮らしぶりを想像するのはとても楽しみです。なにしろ武器や性格を示す癖など、原作者の用意してくれたヒントがたくさんありますから。

『勇者の剣』表紙
 ★生きものたちといえば、オコジョの「〜ですらあ」とかモグラの「〜でがす」など、語り口が生き生きとしていて、魅力がさらに増しているように感じられました。

 生き生きしていると感じていただけたらとても嬉しいです。どの生きものも、読み進めるうちに性格や癖が見えてくると、どこかで会ったことがあるような、懐かしいような恐いような気がしてきます。もちろん、鞭のクルーニーでもヤマネコの姫君でも、あれほど極端な「人間」には出会っていませんけどね。それぞれの生きものに原作者が与えた性格は、じつはだれにも、私自身にもその片鱗があるように思え、すると自然にその生きものらしい口調が頭に浮かんできます。私自身、爬虫類から哺乳類まで、嫌いな動物が少ないことも幸いしているのかもしれませんね。


★登場する生きものの名前についてですが、〈しりっぽ五分〉など、言葉の意味をとって日本語に直したものが多くありますね。このあたりはどのように工夫されたのでしょう。

 登場する生きものそれぞれに、まずネズミ、ドブネズミなど動物の種類を示すカタカナの名前があり、さらに、“マッティメオ”、“スレイガー”などその動物に固有の名前が加わるため、音訳だけだとカタカナの名前だらけになってしまいがちです。そこで、主人公にしても敵の総大将にしても、物語を引っ張っていく役は、日本語に直さずにカタカナの名前のままにし、悪の手下たちやスズメやトガリネズミの仲間たちは、日本語の名前にしました。今までにつけた名前と重ならないように訳を考えるのはなかなか大変でした。なにしろ、シリーズ3冊目に進んで、生きものの数もいよいよふくらんできましたから。1冊ずつ独立しているとは言っても、似た名前に聞こえることはさけたいと思っています。


★このシリーズで〈謎解きの詩〉は、物語の展開の鍵を握る重要な役目を担っていますが、言葉遊びなどいろいろなしかけがしてあるので、それを日本語にするのは大変だったのではないですか。

 〈謎解きの詩〉は、原作者が思い切り遊んでいると感じますね。一度、直訳してから日本語として整えるときに、謎解きの構造やしかけが英語版と共通するようにしたいと、いつも心がけています。


★おいしそうな料理やお菓子、飲み物の描写がたくさんあって、読んでいるとため息が出てしまいます。西郷さんは、実際に作ってみたり、取り寄せてみたりといったこともなさったのでしょうか。

 それまで自覚がなかったのですが、「レッドウォール伝説」シリーズに出会ってから、自分の食いしん坊の一面を意識するようになりましたね(笑)。訳すためにどんな料理なのか想像するのですが、味や香りを思い描いてみたり、日本にはまったくなじみのないものについては、今、日本で手に入る商品や、外国の雑誌や本に載っているレシピを参考にしたりしています。原作者は、お料理の本を読んだり眺めたりして子ども時代にグルメな想像を膨らませていたということです。どの料理にもどのお菓子にも、原作者が子どものころに頭で想像していた味、幻の味がつけてあると考えるとわくわくします。


★世界的にも、また日本でも、たくさんのファンタジー作品が出版されていますが、こういった傾向についてはどう思われますか?


 ファンタジー作品に、ひとつの大きな受け皿が与えられたため、面白い作品が書店でまとめて探せるようになったのは大歓迎です。たとえばの話ですが、レッドウォールシリーズを動物物語に分類してしまったら、必ずしも手に取りやすい、目に付きやすい場所に並ぶでしょうか、どうでしょうか。

 

■ 翻訳について ■

★翻訳をするようになったきっかけを教えてください。

 もともと、言葉にはとても興味がありました。最初は、海外の文献をじっくり読みたくて訳したり、仕事先で海外の情報を集めたりと、いずれも翻訳者として食べていくためではなく、およそ実用のために訳していました。物語の翻訳との出会いは、人との出会いに似ていて、得ようとして得たというよりも、たまたま縁が重なって生まれたように思います。


★「自然と人のつきあい方と手仕事の結びつきに興味がある」と訳者紹介に書かれていますが、そうしたご興味と翻訳とはどのようにつながっているのでしょうか。


「紙一枚でも、布地一反でも、品物が、その土地と人がどう付き合っているかを示している」という言葉を読んで感動して以来、手仕事の品々がどうして好ましいのか考えるようになりました。私の好きな言葉に「気候風土」があります。これは、人の生活も文化も、住んでいる場所の気候、土地に生きる植物や人間以外の動物、海に近いか豊かな森があるかなどと密につながっている、という考え方を表す言葉だと思うのです。翻訳とは遠そうですが、日本に育った私たちが海外の文化にひかれるのはなぜだろう、あるいは異文化のなかに懐かしさを見つけることがあるのはどうしてだろう――そんなことをぼんやり考えていると、違う文化や考え方を橋渡しする翻訳とも、ときに少し気楽に、ときには襟を正して取り組めるような気がしてきます。


★この先、どのような本を訳してみたいと思われますか? また、今後の出版予定を教えてください。「レッドウォール伝説」シリーズ4冊目以降は出版されますか?


 半分フィクションで半分は事実に基づく物語にも興味をひかれます。考古学が好きなため、文字で記録されなかったけれど、口伝えで残った物語などがあったら読んでみたいし、もし機会があったら訳せたらいいと思います。

 今後の予定ですが、今4冊目の翻訳の準備をしています。ちょうど風邪を引いてしまい、長い物語を読みきる体力を蓄えなければと反省しているところです


★翻訳家をめざすみなさんへのアドバイスをお願いします。 『狼とくらした少女ジュリー』表紙

 アドバイスというとおおげさなのですが、私の翻訳のやり方や考え方について少し話させてください。

 原作者が思い描いたとおりの画像を、翻訳者を通して読者に伝えるために、見たこともない風景や植物や動物でも、3−Dの映像のように目の前に思い描けるようになるまで、調べ物を重ねています。『狼とくらした少女ジュリー』では、アラスカの果てしなく続く雪の平原とは実際にどんな風なのか、そこにひとりきりでいる主人公のさみしさはどんなものなのか、それがなかなか見えてきませんでした。図書館や古書店で本を探しては北極圏を描いた挿絵を見つけ、写真集を何度も見て、主人公の居場所を感じるようになったとき、気持ちの動きが伝わってきて、ようやくぴったりくる言葉が出てきました。 また『モスフラワーの森』(「レッドウォール伝説」シリーズ2冊目)でモグラが洞窟の壁に穴をほって仲間を脱出させる場面では、自分で身振り手振りで真似てもぴんと来なくて、簡単な模型を作ったり、絵を書いてみたりということもやりました。 『モスフラワーの森』表紙

 調べ物をする際には、動物ならこの人、植物ならこの人と、実物をよく見ている人に会って直接教えてもらうこともあります。そして、メモを取っておく。そうすると、後で同じ言葉にでくわしたときにもう一度その意味を考えるチャンスができて、だんだん自分の知識になるように思えます。

 また、よく言われることですが、辞書はとことん引くようにしています。英和・和英と引き比べ、日本語の大きな辞書ともあわせて見ると、自分がぴったりだと思って選んだ訳語が、ほんとうにニュアンスまで合っているかどうか確かめる手立てになるようです。また原作者がいいたかったことに少しでも近づけるように、英英を引き、英英の類語辞典・日本語の類語辞典も参考にします。どの辞書を引くのでも、(1)の意味から最後の記述までじっくり目を通すのが肝要です。どうもこの言葉のニュアンスは微妙にずれていると気づくことも多々あります。そんなときには国語辞典を何冊も引きくらべてさらに確認します。時には自分のとんでもない記憶違いや勘違いがあきらかになったりして、冷や汗を流すことも……。最近は、「ああ今のうちに気づいてよかった」と間違いを認めた自分を励ますことにしています。

(取材・構成 植村わらび)


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展示会/セミナー・講演会情報

―― 展示会情報 ――


◎大阪府立大型児童館ビッグバン「夢ふくらむ〈おもしろ絵本大集合〉」
所在地: 大阪府堺市茶山台1-9-1
電 話: 072-294-0999
会 期: 平成15年3月20日(木)まで
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)
入場料: 一般1000円 中学生800円 小学生600円 幼児(3歳以上)400円
内 容: 見開き1メートルの大型絵本、ランドルフ・コールデコットの木版色刷り絵本の復刻版、しかけ絵本などが勢揃い。
参 考:  http://www.bigbang-osaka.or.jp/event/index.html
▼こちらのページには20%割引チケット表示有り
http://www.bigbang-osaka.or.jp/index2.html
 
◎北海道立帯広美術館「はじめての美術―絵本原画の世界―」
所在地: 北海道帯広市緑ケ丘2番地
電 話: 0155-22-6963
会 期: 平成15年3月26日(水)まで
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)
入場料: 一般900円 大学生・高校生550円 中学生・小学生350円
内 容: 「こどものとも」シリーズより、『おおきなかぶ』や『ぐりとぐら』などの絵本原画300点余りを紹介。
参 考:
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.jp/hk-obimu/tokubetsu/tokubetu2.HTM
 
◎大崎ゲートシティ「『国際子どもの本の日』〜本をひらけばたのしい世界〜」
所在地: 東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティホール・ルーム(地下1階)
電 話: 03-5496-3131(施設に関する問合せ)
03-3566-6688(イベントに関する問合せ)
会 期: 平成15年3月30日(日)
入場料: 無料
内 容: アンデルセンの誕生日を「国際子どもの本の日」とし、世界中でお祝い。ワークショップやおはなしなどを見たり聞いたりして楽しめる。
参 考: http://www.gatecity.co.jp/topics/event-navi.html
 
◎国際子ども図書館「占領期の子どもの本―メリーランド大学所蔵プランゲ文庫児童書コレクションから」
所在地: 東京都台東区上野公園12-49 3階「本のミュージアム」にて
電 話: 03-3827-2053(代表) 03-3827-2069(録音テープによる案内)
会 期: 平成15年4月13日(日)まで
休館日: 月曜日、国民の祝日、資料整理休館日(3月19日)
入場料: 無料
内 容: 戦後の占領期の日本を理解する上で大変貴重な資料を300点以上展示。
参 考: http://www.kodomo.go.jp/cal/tenji.html
 
◎絵本の樹美術館「杉浦範茂 絵本・装幀原画展」ほか
「島田ゆか 絵本複製画展」同時開催
所在地: 山梨県北巨摩郡大泉村西井出字石堂8240-4579
電 話: 0551-38-0918
会 期: 平成15年3月21日(金)から5月18日(日)まで
休館日: 水曜日、木曜日、展示変え日
入場料: 一般・大学生・高校生700円 3歳以上中学生以下300円
内 容: 杉浦範茂『かみかくし』全点、『キャプテンはつらいぜ』全点ほか、島田ゆか『うちにかえったガラゴ』全点。
参 考: http://www.cam.hi-ho.ne.jp/g-mama/

上記以外のものも随時「速報(イベント情報)」で更新していますので、どうぞこちらもご覧ください。
http://www.yamaneko.org/event/index.htm
 
(清水陽子/笹山裕子)


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―― セミナー・講演会情報 ――


◎津田塾会・JBBY 河合隼雄講演会「いま 子どもの本にできること」
講 師: 河合隼雄(臨床心理学者・文化庁長官)
場 所: 津田ホール(〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷1-18-24)
日 時: 平成15年4月5日(土) 13:30〜15:00
参加費: 一般1500円 学生1200円
定 員: 490名(全席自由席)
申込み: (1)前売り受付 平成15年3月24日(月)必着
  氏名、住所、電話・FAX番号、講演会名、枚数(一般か学生か)を記入のうえ、下記問合せ先へFAX/E-mail/郵送で申込む。
(2)平成15年3月25日(火)〜当日の受付 下記の問合せ先へ電話で予約状況を確認すること。
※参加費は、(1)は前納制(銀行振込か直接来館して支払う)。
      (2)は、当日津田ホール3階受付にて支払う。
問合せ: 財団法人津田塾会 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷1-18-24
TEL/FAX 03-3404-6584 E-mail [email protected]
詳 細: http://www.tsudajukukai.or.jp/h00/h02/news/0304kawai.html
 
◎愛知川町びんてまりの館
ブラティスラヴァ世界絵本原画展 記念講演会「絵本とは何か?」
講 師: 松居直(児童文学家)
場 所: ゆうがくの郷(滋賀県愛知郡愛知川町大字市1673)
日 時: 平成15年3月21日(祝・金) 14:00〜15:30
申込み: 下記の問合せ先へ電話で申込む。
問合せ: 愛知川町びんてまりの館 滋賀県愛知郡愛知川町大字市1673
TEL 0749-42-4114 FAX 0749-42-8484
その他: ブラティスラヴァ世界絵本原画展(『おじいちゃん わすれないよ』原画展も同時開催)の会期は、平成15年3月1日(土)から4月20日(日)まで(月・火曜の休館日は除く)。入館料は無料。
 
◎クレヨンハウス 子どもの本の学校 「子どもの文学――押し寄せる“動物化”の波の中で」
講 師: 清水真砂子(翻訳家)
場 所: クレヨンハウス東京店(東京都港区北青山3-8-15)
劇団ひまわりビル(大阪府吹田市江坂町1-18-2)
日 時: 東京 平成15年4月19日(土) 大阪 4月12日(土) 16:00〜17:30
参加費: 2500円(会員は無料)
定 員: 東京 120名 大阪 150名
問合せ: 東京店(TEL 03-3406-6492) 大阪店(TEL 06-6330-8071)
その他: 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。

(吉村有加/竹内みどり)


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世界の児童文学賞 第22回

―― コレッタ・スコット・キング賞(アメリカ) ――
〜 アフリカ系アメリカ人作家/画家の作品を評価する児童文学賞〜


■概要
名 称 : コレッタ・スコット・キング賞(The Coretta Scott King Award)
対 象 : 前年12月1日までに出版されたアフリカ系作家/画家の作品
部 門 : 作家部門/画家部門
創 設 : 1969年/1974年
主 催 : 米国図書館協会(ALA: American Library Association)
選 考 : コレッタ・スコット・キング賞専門委員会(Coretta Scott King Task Force)
発 表 : 毎年1月下旬
関連サイト: http://www.ala.org/ala/emiert/corettascottkingbookawards/corettascott.cfm



 コレッタ・スコット・キング賞は、アフリカ系アメリカ人作家の作品を評価するため、1969年に創設された。賞の名称は、公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング牧師の遺志を継いで活動するコレッタ・スコット・キング夫人をたたえてつけられたものである。対象者は、子ども向けの作品を通じてアフリカ系アメリカ人の歴史や文化を表現した作家および画家で、応募された作品をもとに選ばれる。審査は児童文学の専門家7名によって行われ、多文化社会の一員としての意識を高める作品であることが重要視される。

 第1回の授賞は1970年で、1974年には画家賞が加わった。さらに1995年からは、新人を対象とした賞も贈られることになった。この賞は、1989年に若くして亡くなった画家の名にちなんで John Steptoe Award for New Talent と呼ばれている。

 創設当初は、数人の有志が非公式で選考や運営を行っていたが、1979年に「コレッタ・スコット・キング賞専門委員会」が組織され、翌年、ALA の機関の一部となった。それを受けて、1982年には同賞が ALA 公認の文学賞に加わり、現在に至っている。

 

◆2003年受賞作家・画家(2003年1月27日発表)

<作家賞>

●Nikki Grimes(ニッキ・グライムズ)

 "Bronx Masquerade" で受賞。同時に、文を担当した画家賞受賞作品では、作家賞部門のオナー(次点)にも選ばれた。1999年の "Jazmin's Notebook" でもオナー(次点)となっている。邦訳はまだない。

(参考サイト:http://www.nikkigrimes.com/


<画家賞>

○E. B. Lewis(E・B・ルイス)

 "Talkin' About Bessie: The Story of Aviator Elizabeth Coleman" で受賞。1999年と2001年にオナー(次点)となっている。邦訳はまだない。

(参考サイト:http://www.eblewis.com/

 

◇過去の主な受賞作家・画家

<作家賞>

●Christopher Paul Curtis(クリストファー・ポール・カーティス)

 1996年、"The Watsons Go to Birmingham−1963"(『ワトソン一家に天使がやってくるとき』唐沢則幸訳/くもん出版)でオナー(次点)となる。2000年には "Bud, Not Buddy"(『バドの扉がひらくとき』徳間書店より3月18日刊行予定)で本賞を受賞し、ニューベリー賞も獲得した。


<画家賞>

○Bryan Collier(ブライアン・コリアー)

 2001年に "Uptown" で受賞したほか、同年以降立て続けにオナー(次点)となっている注目の画家。邦訳に『キング牧師の力づよいことば―マーティン・ルーサー・キングの生涯―』(もりうちすみこ訳/国土社)がある。

(参考サイト:http://www.bryancollier.com/


(須田直美)

※2003年3月 「クリストファー・ポール・カーチス」を「クリストファー・ポール・カーティス」に訂正

 
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