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月刊児童文学翻訳

─2000年2月号(No.17 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:[email protected]
2000年2月15日発行 配信数1,528


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎特集1
★2000年ニューベリー賞★ 受賞作レビュー

◎特集2
★第1回マイケル・L・プリンツ賞★ 受賞作と作家

◎注目の本(邦訳絵本)
ウーリ・ステルツァー写真・文『「イグルー」をつくる』

◎注目の本(邦訳読み物)
キンシー=ワーノック作『スウィート・メモリーズ』

◎注目の本(未訳)
シンシア・ハーネット作 "The Wool-Pack"

◎Chicocoの洋書奮闘記
第12回「ユーモア好きなら読んで」(よしいちよこ)



特集1

―― 2000年ニューベリー賞 受賞作レビュー ――

 

 本誌号外でお知らせした通り、1月17日、アメリカの伝統ある児童文学賞、ニューベリー賞の受賞作が発表された。この賞は、米国図書館協会(ALA―American Library Association)が、昨年米国で出版された子どもの本の中で、最も優れた作品に対して贈るものである。

 本年度の受賞作品"Bud, Not Buddy"のレビューを、いちはやくお届けする。

 

『バディじゃない、バドだよ』(仮題)
クリストファー・ポール・カーティス作

Christopher Paul Curtis "Bud, Not Buddy" 245pp.
Delacorte Press 1999, ISBN 0-385-32306-9

 

 6歳で母親を亡くし孤児院で暮らしていたバドは、10歳のとき、ある家庭に預けられることになった。だが、そこの息子にいじめられ、すぐに家を飛び出してしまう。行くあてのないバドは、一度も会ったことのない父親に会うため、190キロ離れたグランドラピッズの街まで歩いて行こうと決心する。手がかりは、母親が残してくれたジャズ・バンドのチラシ。生前の母親がチラシを見ていたときのようすから、バンドのリーダーでベーシストの「ハーマン・E・キャロウェイ」こそ自分の父親に違いないと、ずっと思っていたのだ。真夜中、グランドラピッズまでの道を歩いているときにレフティ・ルイスという人物と出会い、うまい具合に車で送ってもらうことになったバド。はたしてハーマンに会えるのか? 本当にハーマンが彼の父親なのか?

 大恐慌時代のアメリカが舞台で、主人公は孤児の黒人少年。だがこの物語に暗さや重苦しさは感じられない。確かに人種差別や貧困も描かれてはいるが、バドを始めとする登場人物がみな、バイタリティーにあふれていてたくましいのだ。孤児として生きていくため、バドは自分でいろいろなルールを作っている。名づけて「バド・コールドウェルの、楽しい毎日とうそ上達のためのルール」。「うそをつくなら簡単でおぼえやすいものにすること」という第3条から始まって、第118条、第328条(いったい第何条まであるのだろう)……と次々に登場するこのルールは、くすりと笑えるものからなるほどと感心させられるものまでさまざまだ。大人を相手にうそ八百を並べるバドはなかなかしたたかだが、ルイスの車の中に「血液」と書かれた箱があるのを見て彼を吸血鬼だと思い込んでしまうような子どもっぽさもある。罪のないうそはつくけれども明るくまっすぐな心を失わないバドの姿に、母親から注がれた愛情の深さを感じ、心を打たれた。愛されて育ったという記憶が、これからもきっと、バドの生きる力になっていくのではないだろうか。

 話の展開のしかたは少々できすぎているように思えなくもないが、それもこの作品の魅力のひとつなのかもしれない。読んだあとで心が暖かくなる物語だ。作者のストレートなメッセージとともにちょっとした種明かしが用意されているあとがきも、またいい。

(生方 頼子)

 

【Christopher Paul Curtis(クリストファー・ポール・カーティス)】

 アメリカ、ミシガン州フリント出身。自動車工場で働くかたわら、ミシガン大学フリント分校で学ぶ。はじめて書いた小説"The Watsons go to Birmingham―1963"(『ワトソン一家に天使がやってくるとき』/唐沢則幸訳/くもん出版)が1996年のニューベリー賞オナー・ブックに選ばれる。現在は妻子とともにカナダのオンタリオに在住。

 

★ニューベリー賞の詳細については、本誌1998年12月号「世界の文学賞」の記事をご参照ください。

過去の受賞作品リストは、やまねこ翻訳クラブのホームページにあります。

 

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特集2

―― 第1回マイケル・L・プリンツ賞発表 ――
マイヤーズ作"Monster"

 

 新ミレニアム最初の年の1月、ニューベリー賞・コールデコット賞の発表と同じ日、アメリカで、第1回Michael L. Printz Award(以下、プリンツ賞)の発表が行われた。この賞は、米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門(YALSA)が主催するもので、同部門のメンバーとして長年活躍した故プリンツ氏の名にちなんで設立された。

 既設のMargaret A. Edwards Award(以下、MAE賞)が優れたヤングアダルト「作家」に贈られるのに対し、プリンツ賞は優れたヤングアダルト「作品」に贈られる。フィクション、ノンフィクション、詩、アンソロジーなど、作品の分野は問わず、前年にアメリカで出版されたすべてのヤングアダルト作品が対象となる。

 記念すべき第1回の受賞作およびオナーブックは以下の通り。

 


★Winner
"Monster" by Walter Dean Myers
☆Honor Books
"Skellig" by David Almond
"Speak" by Laurie Halse Anderson
"Hard Love" by Ellen Wittlinger

 

 オナーブックの中の1冊"Skellig"は、昨年イギリスで見事カーネギー賞を受賞した作品(本誌99年7月号参照)。ほかの作品については、本誌書評編で随時取り上げていく予定。受賞作の"Monster"および作者のマイヤーズについては、以下で詳しく紹介する。

 

 

"Monster" 作品紹介


―― 真実を探し求める少年の物語 ――

 

『モンスター』(仮題)
ウォルター・ディーン・マイヤーズ作

Walter Dean Myers "Monster"281pp.
HarperCollins 1999, ISBN 0-06-028077-8

 

 この作品の主人公は、16歳の黒人少年、スティーブ。彼は、友人ふたりと共謀しドラッグストアの店主を殺害したとして、殺人罪に問われている。暴力が横行する少年拘置所の薄暗い監房の中で、スティーブは日記に自分の無実を、社会から突然切り離されてしまった恐ろしさを、拘置所生活の悲惨さを、世の中の理不尽さを、思うままに綴っていく。

 とはいえ、日記の部分は全体のほんの一部。作品のほとんどは、法廷内のシーンに費やされており、裁判官、検察官、弁護士、証人などのセリフ、およびト書きによる台本形式で描かれている。というのも、映画クラブの一員だったスティーブが、今回の自分の経験を映画にすることを思いつき、台本を作った、という設定だからだ。

 読者は、まるで自分がアメリカの法廷にいるような感覚で物語を読み進めていくことになる。そして、陪審員と一緒に真実は何かを考えさせられる。証人たちの言っていることは正しいのか、スティーブは本当に犯罪に関わっていないのか、スティーブの日記に書かれていることは……?

 作品のタイトル『モンスター』は、スティーブが検察官からつけられた呼び名だ。自分は本当にモンスターなのか、それとも普通の人間なのか、スティーブは考える。その答えは、作品の中には示されていない。どう判断するかは、スティーブ自身に、そして読者に委ねられている。

 

 

"Monster" 作家紹介


―― 人種差別問題に取り組む作家 ――

 

 アフリカ系アメリカ人であるウォルター・ディーン・マイヤーズは、黒人差別問題に関する作品を数多く出版しており、コレッタ・スコット・キング賞、バージニア・ハミルトン文学賞(第1回受賞者)、MAE賞など、数多くの賞を受賞している。1989年には"Scorpions"で、1993年には"Somewhere in the Darkness"で、それぞれニューベリー・オナーにも選ばれた。今回の"Monster"も、昨年、ボストングローブ=ホーンブック賞のオナーに選ばれ、ニューベリー賞をはじめとする様々な文学賞にノミネートされた。

 一般書も含め、フィクション、ノンフィクション、詩などを100作前後発表しているが、残念ながら今のところ日本で出版されているのは、『自由をわれらに』(金原瑞人訳/小峰書店)と『アフリカ系アメリカ人』(石松久幸訳/三一書房)だけのようだ。

 "Monster"の主人公と同じ、ニューヨーク市のハーレムで育ったマイヤーズは、現在、家族とともにニュージャージー州に暮らしている。

(宮坂宏美)

 

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注目の本(邦訳絵本)

―― 素朴な雪の家にこめられた、北の民族の知恵 ――

 

『「イグルー」をつくる』
ウーリ・ステルツァー写真・文 千葉茂樹訳
1999.12 あすなろ書房 本体1,200円

Ulli Steltzer "BUILDING AN IGLOO"
Douglas & McIntyre 1981

『「イグルー」をつくる』表紙

 

 「イグルー」は、地球の北の果てに住むイヌイットと呼ばれる人々が作り伝えてきた、雪と氷でできた家。夏になると融けて消えてしまう、この素朴で快適な家は、冬の間の生活の場として、実際に使われてきたものだ。今では、イグルーで暮らしている人はほとんどいなくなってしまったけれど、猟師のトゥーキルキー・キグクタクは、ホッキョクグマを追って長い猟に出るときには、今でもイグルーを作ってキャンプに使う。

 イグルー作りで一番大切なのは、いい雪を選ぶことだ。固すぎても、やわらかすぎてもいけない。場所が決まったら、雪を鋸で切り出してブロックを作り、らせん状に積み上げていく。息子のジョピーと2人でいっしょうけんめい働いても、完成には2〜3時間はかかる。そうしてできあがったイグルーの中はあたたかく、海の氷で作った窓から入る光で、不思議な色合いに染め上げられている。この小さな雪の家には、極地に生きる人々が親から子へと伝えてきた、たくさんの知恵がつまっているのだ。

 この本に出会うまで、私は「イグルー」は「かまくら」と似たような形のものだというイメージしか持っていなかった。イグルーには、煙突も窓も玄関もちゃんとついているのだ。中でダンスもできるほど大きなものだって、作ろうと思えば作れるということにまず驚き、実に理にかなっていて無駄のないその工程にまた驚かされた。

 イヌイットの人々にとっても、伝統的な生活の知恵を次の世代に受け渡していくのは難しい時代になっているのだろうが、しっかりとバトンを渡しているこの親子の姿には、頼もしさを覚える。振り返って、私は親から受け継いだ何を自分の子どもに伝えてやれるだろうか……と思うと、いささか恥ずかしくなるのだが。

 淡々とした文章と白黒の写真だけで構成された、そんなに長くもない絵本なのに、じっと見ていると、雪が反射する日差しのまぶしさや空の青さまでが目に浮かんでくる。それとともにいろいろなことを考えさせられた1冊だった。

(岩佐直美)

 

【作者】Ulli Steltzer(ウーリ・ステルツァー)

 1923年、ドイツに生まれる。1953年、アメリカに渡り音楽教師をした後、写真を学び、貧しい移民労働者の実態をとらえたドキュメントなどを手がける。1972年、カナダに移ってからは、アメリカ先住民をテーマにした写真集の刊行を中心に、写真家として活躍している。本年、中国雲南省の少数民族を被写体とした作品も発表。伝統的な民族芸術を扱った、情感あふれる写真で有名。


【訳者】千葉茂樹(ちば しげき)

 1959年、北海道に生まれる。国際基督教大学卒業。編集者として出版社勤務の後、北海道当別町で翻訳に従事。主な訳書に、『ウエズレーの国』(あすなろ書房)『みどりの船』(あかね書房)『ひねり屋』(理論社)ほか多数がある。第1回、第2回やまねこ賞(絵本部門)受賞。

 

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注目の本(邦訳読み物)

―― シンプルな物語が持つ、不思議な力 ――

 

『スウィート・メモリーズ』表紙

『スウィート・メモリーズ』
ナタリー・キンシー=ワーノック作 金原瑞人訳
1999.11 金の星社 本体1,200円

Natalie Kinsey-Warnock "SWEET MEMORIES STILL"
Dutton Children's Books 1996

 

 シェルビーは、内気な女の子。みんなに注目されるのが何よりも苦手だ。そんなシェルビーの誕生日パーティの前日、おばあちゃんが倒れた。看病のため、お母さんといっしょにしばらくの間おばあちゃんの家にいることになったシェルビー。パーティは中止になるし、おまけにおばあちゃんがくれた誕生日プレゼントは、古くさいカメラ! すっかりご機嫌ななめのシェルビーだが、おばあちゃんからカメラの思い出話をきき、昔の写真を見ているうちに、少しずつ何かがわかってきて……。


「訳者あとがき」によると、訳者の金原氏はこの本のあとがきを書きたくなかったという。「どう書いたって、この本のすばらしいところを説明できそうにないから」。まったく同じ理由で、これは書評を書きたくない本でもある。この物語の素朴さと幸福な読後感は、解説や説明のしようがない。なのに勧めたい。そういうお話なのだ。

 シェルビーが、おばあちゃんと生活することで見つけたのは、おばあちゃんの少女時代の思い出と、今のおばあちゃんの夢、そして自分の本当の気持ちである。子どもは、昔の人びとの暮らしを知ることで、今の自分の存在を確かめ、驚くほどの成長をとげることがある。その劇的な成長が、この短い物語の中では、ひとりの内気で意地っ張りな女の子の姿を通して、ごくごくシンプルにストレートに描かれている。この幸せな展開は、最初のページを読んだときから予測がつくくらいだ。

 それなのに、シェルビーが成長した証を目の当たりにしたとき、わたしは胸がきゅんとしてしまった。そう、このお話には、読者の心の中の「スウィート・メモリーズ」を呼び起こす、不思議な力と魔法がある。当たり前のことを当たり前に伝えるからこそ、だれの心にもある優しさを呼び起こすことができるのだ。

 疲れたときには、流行の「癒し系」より、このお話をどうぞ。

(森 久里子)

 

【作者】 Natalie Kinsey-Warnock(ナタリー・キンシー=ワーノック)

 米国・バーモント州ノースイースト・キングダム出身。大学で芸術と体育指導を専攻。これまでに、クロスカントリースキーのインストラクターや高齢者の生涯学習支援団体の代表など、多くの職業を経験している。主な作品に"The Canada Geese Quilt"(『おばあちゃんのキルト』上田理子訳/文研出版/作者名はキンジーワーノックと表記)、"The Wild Horses of Sweetbriar"(未訳)などがある。


【訳者】金原瑞人(かねはら みずひと)

 1954年、岡山県生まれ。法政大学教授、英米文学翻訳家。『“少女神”第9号』(F.リア・ブロック作/理論社)、『インディアン・キラー』(S.アレクシー作/東京創元社)など、新しい感覚の作品を精力的に紹介する一方、『のっぽのサラ』(P.マクラクラン作/ベネッセコーポレーション)や本作のような、素朴な作品の翻訳も数多く手がけている。

 

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注目の本(未訳)

―― 羊毛をめぐるサスペンスと少年の成長 ――

 

『消えた羊毛の謎』(仮題)
シンシア・ハーネット作

Cynthia Harnett "The Wool-Pack" 238pp.
(初版時の題名"Nicholas and the Wool-Pack")
First published by Methuen & Co. Ltd. 1951
Puffin Books 1961, ISBN 0-14-030153-4

 

 15世紀のイギリスで、羊毛商人の息子ニコラスは、父の仕事を継ぐための勉強をしている。その頃イギリスの羊毛貿易にはかげりが見え始めており、イタリアの銀行家たちが貿易の実権を握ろうとしていると噂されていた。ある日父がイタリアの銀行家の一行を家に招いたが、翌日ニコラスは彼らの不可解な行動を目撃する。

 そんな折にニコラスは、商売の安定のために毛織物業者の娘と婚約することになる。今までニコラスは羊飼いの息子ハルと兄弟のように一緒に育ってきたが、子供時代はもう終わり、二人の立場も違ってきたことを痛感し始めた。数日後許婚となるセシリーと対面するが、セシリーも銀行家の不審な行動を見たことがあるとわかった。心配になったニコラスは父に話そうとするが、取り合ってもらえない。ところが出荷した羊毛に立て続けに問題がおき、父は苦境に立たされてしまう。父を助けるためにニコラスは、ハルやセシリーと協力して真相の解明に乗り出すのだった……。

 この作品は子供たちに歴史を教える目的で書かれたということで、実際の事件を基にその時代の生活を詳細に描いている。わかりにくいものには必ず挿絵や説明があり、理解の助けとなっている。しかし歴史の知識を与えるだけに留まらず、物語としてもよくできた作品である。ミステリー風の筋立てはややストレートではあるが、ニコラスが様々な新しい出来事に直面し、戸惑いながらも成長していく様子が、事件に絡めてうまく描かれている。

 中世イギリスの羊毛業という設定は日本人にはなじみがなく、難しそうだと思うかもしれない。しかし、詳しい挿絵や描写により、この時代の様子はイメージしやすくなっている。コロンブスの航海への言及などもあり、時代の全体像もつかむことができる。特殊な設定というハードルは越えられないほど高くはなく、事件の追及を楽しみながら中世についての知識を得られる、一挙両得の物語である。

(田辺 規子)

 

【Cynthia Harnett (1893-1981)(シンシア・ハーネット)】

 イギリスの子供向け歴史小説家。1955年のカーネギー賞に選ばれたこの作品のほかに、18世紀初期の建築家の物語"The Great House"、キャクストンの時代の印刷工と写本家の争いを描いた"TheLoad of Unicorn"などがある。綿密な調査をもとに物語の時代の詳細を描写し、自ら挿絵も描いている。詳細な歴史描写によって物語の語り口が重くなることはなく、作品はイギリスの子供たちに支持され続けている。

参考:『オックスフォード世界児童文学百科』(原書房)

 

この"wool-pack"は、やまねこ翻訳クラブ開催のカーネギー賞受賞作読破マラソンをきっかけとして、クラブメンバーの注目を集め、昨年第2回やまねこ賞未訳部門の4位を受賞した。

 

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Chicocoの洋書奮闘記 第12回 よしいちよこ

―― 「ユーモア好きなら読んで」 ――

 

 洋書を1冊読み切るのがつらかった私だが、10冊をすぎると楽しくなってきた。今回は、笑える本を紹介しよう。

 "ANASTASIA, ABSOLUTELY"(Lois Lowry/1995年/A Yearling Book)。119ページ。

 アメリカ児童書界の大御所、ロイス・ローリー。読者に深い感動を与えるとともに、問題をなげかける名作『ザ・ギバー』、『ふたりの星』などで有名だが、この本はがらりとタイプが違って、ユーモアたっぷりの笑えるシリーズの最新作。アナスタシアという名の少女が主人公で、毎回、彼女のまわりで事件がおきて大騒ぎ。それを読むこちらは大笑い。

 アナスタシアは13歳。大学教授のパパと画家のママ、弟のサムの4人家族。ある日、飼いはじめたばかりの犬をはじめて散歩につれていく。ママから投函をたのまれた郵便物と犬のフンいれ袋を手に、早朝の町に出かけるが……。

 

【1999年の日記から】
【1/16】 妊娠34週めにはいり、里帰り出産のため、奈良の実家に帰る。パソコンのない生活がはじまる。洋書を読むいい機会だ。きょうは8ページ。
【1/17】 12ページ。アナスタシアが提出する、価値観についての宿題レポートが章ごとにのっている。このレポートを書くことが、のちに意味をもってくる。
【1/18】 26ページ。おっ! 事件発生! FBI! DNA! 大爆笑。
【1/19】 あまりのおもしろさに、いっきに51ページ。
【1/20】 22ページ。読了。あー、おもしろかった。それにしても、ママがコールデコット賞オナーの受賞画家だったとは知らなかった。

 

 アナスタシアの邦訳は、「わたしのひみつノート」(掛川恭子訳/偕成社)というシリーズで4巻まで出ているが、本書は未訳。邦訳もおもしろいが、洋書で読むと、口達者なアメリカのティーンたちの姿が目にうかび、テレビのコメディ・ドラマを見ているようだ。アメリカでは、弟のサムを主人公にしたシリーズも人気があると知り、さっそく"ALL ABOUT SAM" を購入。これから読むのが楽しみだ。 

 

★ロイス・ローリーの年譜は、こちらでごらんいただけます。

 

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●編集後記●

 2000年は「子ども読書年」だそうですね。官民の活動に期待します。もちろん、我らやまねこ翻訳クラブも、ばりばり頑張ります!(き)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 森久里子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 菊池由美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ MOMO つー さかな こべに みーこ きら Rinko  SUGO わんちゅく みるか
協 力: @nifty 文芸翻訳フォーラム
小野仙内 ながさわくにお Blue Jay うさぎうま


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