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月刊児童文学翻訳

─2001年12月号(No.36 情報編)─

※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:[email protected]
2001年12月15日発行 配信数 2,340


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎新人応援!
第2回 田中亜希子さん

◎展示会情報
大阪国際児童文学館「川端誠絵本原画展」ほか

◎セミナー・講演会情報
福音館書店「創立50周年記念講演会」ほか

◎世界の児童文学賞
第17回 信誼幼児文学奨(台湾)

◎読者の広場
海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!



新人応援! 第2回

―― 田中亜希子さん ――

 

 新人応援の第2回は、11月末に絵本『コッケモーモー!』(ジュリエット・ダラス=コンテ文/アリソン・バートレット絵/徳間書店)を出版された田中亜希子さんです。作品について、これまでどんな勉強をしてこられたのか、それがどう仕事に結びついていったのか、また、お話会の活動について、いろいろお話をうかがいました。

 

【田中亜希子(たなか あきこ)さん】

 千葉県出身。東京女子大学短期大学部英語科卒業。銀行勤務ののち、翻訳学校やオンライン・コミュニティー等で翻訳を学びながら、リーディングや下訳の経験をつむ。やまねこ翻訳クラブ発足当時からの会員。本誌のライターや同クラブのスタッフとしても活躍。「やまねこストーリーテリング勉強会」のメンバーでもあり、おはなし会の活動も続けている。

 

『コッケモーモー!』表紙

★絵本『コッケモーモー!』の刊行、おめでとうございます。やまねこ翻訳クラブ内でも大人気で、読み聞かせをした感想などが続々と寄せられていますね。絵本の紹介を、簡単にしていただけますか。

 これは鳴き方を忘れてしまったおんどりのお話です。「コッケモーモー!」「コッケガーガー!」何度鳴いてみても、どれも変。おんどりはみんなにばかにされ、しょげかえってしまいます。ところがある晩、あやしい物音がして……。短いお話の中に、繰り返しの楽しさがぎゅっとつまった絵本です。鳴き声が面白いので、ぜひ声に出して読んでみてください。お話にぴったりのカラフルで温かい色合いの絵も、魅力のひとつです。ところで、この絵本が書店に出回るひと月ほど前、あるイベントの中でお話会をやらせていただきまして、原書に自分の訳をつけて読み聞かせをする機会がありました。大勢の子どもの前で絵本を読むのは初めてだったこともあり、かなりどきどきしましたが、結果は好感触。子どもたちは鳴き声のところで笑うなど、繰り返しの面白さを充分楽しんでくれたようでした。


★絵本の読み聞かせやストーリーテリングに興味をお持ちだそうですね。

 はい。作者の言葉を日本語にしていく翻訳作業と、自分の声でお話を伝える読み聞かせやストーリーテリングには、共通点があると思うんです。やまねこ翻訳クラブの有志でお話会のグループを作って、ずっと読み聞かせの練習を続けてきました。そしてつい最近、子ども向けのお話会の活動を始めたところです。絵本が出た直後にも、ある幼稚園でお話会をさせていただきました。大勢の前での読み聞かせは2度目ということもあって、そのときは子どもたちの顔を見ながら読む余裕がありました。お話がダイレクトに伝わっているのを肌で感じることができましたね。ハッピーエンドのラストシーンで、子どもたちが輝くような笑顔を見せてくれたときは、すごく感動しました。


★この絵本を訳すことになったきっかけを教えてください。

 翻訳学校でお世話になったこだまともこ先生からのご紹介で、今年の1月から徳間書店で絵本のリーディングを始めました。そして、7月に担当編集者から「この本を訳してみませんか」と声をかけていただいたのがきっかけです。新人の翻訳で出版しようということだったようです。絵本を見てみると、バートレットらしい素敵な絵で、お話の内容も読み聞かせにもぴったりだったので、「やらせてください!」とすぐに返事をしました。


★翻訳を志したきっかけはどんなことですか。また、どんな勉強をしてこられたのですか。

 以前は銀行に勤めていたのですが、退職後、昔から漠然と持っていた「子どもの本に関わる仕事がしたい」という夢に向かって進むことにしました。特に翻訳を選んだのは、自分が子どもの頃に夢中になった本の多くが、翻訳ものだったからです。

 勉強歴ですが、わたしは翻訳学校で児童文学翻訳家のもきかずこ先生とこだまともこ先生に、それから海外著作権エージェント主催の講座で翻訳家の金原瑞人先生にお世話になりました。もともと3人の先生の大ファンで、訳書も拝読していたので、直接指導を受けられるのは、それはもう幸せでした(笑)。課題以外に、本や出版社の話を聞けるのも、勉強になりましたし、何より楽しかったですね。

 翻訳学校のほかに、@niftyの文芸翻訳フォーラムの責任者、小野仙内さんが主催する児童書の翻訳勉強会にも参加。こちらは現在も継続しています。小野さんはあくまでも進行役で、講師のいない自主勉強会です。参加者がお互いの訳を徹底的に批評しあうので、とても勉強になります。


★田中さんは、やまねこ翻訳クラブの初期からのメンバーですね。オンラインの勉強会にも、数多く参加されたようですが。

 はい。やまねこの勉強会には、とてもお世話になっていますし、本当におすすめです。いずれも講師をたてない自主勉強会ですが、都合のいい時間に取り組める、ひとつのことをとことん追及できるなど、たくさんの利点があります。


★やまねこ翻訳クラブのシノプシス勉強会が、仕事へとつながったそうですね。今はどんな仕事をされていますか。

 わたしは、やまねこのシノプシス勉強会に参加するまでは、シノプシスを書いたことがありませんでした。それが勉強会参加後、ある会社のリーダーのトライアルに合格したのですから、その効果は絶大ですよね。

 今は仕事というと、リーディングが多いです。少しずつ翻訳の仕事もいただけるようになりました。

 12月25日頃には、金原先生との共訳で『テリーと海賊』(ジュリアン・F・トンプスン作/アーティストハウス)というヤングアダルト向けの本が出ます。1980年代、アメリカに住む16歳の女の子テリーが、「パパとママがすすめる寄宿学校なんて行かないもんね」と、家出を決行! ある金持ちのヨットに密航して、カリブ行きを計画したものの、これがとんでもないことに……という、ユーモアいっぱい、スリルいっぱい、ロマンスは?(ハテナ)の冒険物語です。ちなみに、わたしはこの本を読むたびに、必ず笑ってしまう場面が2か所、必ずじーんときてしまう場面が1か所あります。みなさんにもお楽しみいただければ幸いです。


★今後の抱負を教えてください。

 今は受身のお仕事が多いのですが、今後は自分でいい本をたくさん見つけて、紹介していけたらと思っています。絵本からヤングアダルト向けの作品まで、児童書全般に興味があります。

 あとは、お話会に積極的に関わっていきたいです。絵本を訳すだけでなく、自分で直接子どもたちのもとに届けることができた経験は、本当に貴重でした。子どもたちと一緒に楽しみながら、「おはなしって楽しいんだよ」ということを伝えていきたいです。

『コッケモーモー!』は、誰からも好かれる田中さんの明るい人柄がそのまま表れた楽しい絵本です。いろんなところで勉強を続けてこられ、その努力が実って絵本の出版! 共に勉強してきた仲間の一人として、こんなに嬉しいことはありません。

(インタビュアー:植村わらび)

 

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展示会/セミナー・講演会情報

―― 展示会情報 ――

 

◎大阪国際児童文学館「川端誠絵本原画展――『サボテンマルティ 大あらしがやってくる』全18点」
所在地: 大阪府吹田市千里万博公園10-6
電 話: 06-6876-8800
会 期: 平成14年1月5日から19日まで
休館日: 水曜日
入場料: 無料
内 容: 『わたしのまっかなバスケット』、「風来坊」シリーズなどで知られる絵本作家、川端誠氏の絵本原画展。今回は「サボテン」シリーズの新作『大あらしがやってくる』の原画18点を紹介。
参 考: http://www.iiclo.or.jp/default.htm
作者プロフィール: http://www.jjp.co.jp/hito/kawabata.html
 
◎国際こども図書館3Fミュージアム「本にえがかれた動物展」
所在地: 東京都台東区上野公園12-49
電 話: 03-3827-2053
会 期: 平成13年12月22日まで
休館日: 月曜、祝日
入場料: 無料
内 容: 動物が登場する国内外の物語を紹介。19世紀に刊行された作品から、絶滅動物などを扱った現代の科学絵本まで、幅広い作品が展示されている。
参 考: http://www.kodomo.go.jp/index.jsp
 
◎丸善・日本橋店4Fギャラリー「第39回せかいの絵本展」
所在地: 東京都中央区日本橋2-3-10
電 話: 03-3272-7211
会 期: 平成13年12月25日まで
休館日: 会期中は無休
入場料: 無料
内 容: 世界の絵本約10,000冊を取り揃えて展示即売。併せて「リサとガスパール」シリーズ(16日まで)と山脇百合子さん(17日から)の絵本原画を展示。
参 考: http://www.maruzen.co.jp/

(瀬尾友子/中野伊都子)

 

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―― セミナー・講演会情報 ――

 

◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「密やかな愉しみ」
講 師: 高楼方子(絵本・児童文学作家)
場 所: クレヨンハウス ※大阪店は開催場所未定。下記は店舗所在地。詳細は問い合わせのこと。
(東京 港区北青山3-8-15 大阪 吹田市垂水町3-34-24)
日 時: 東京 平成14年1月12日(土)16:00〜17:30(15:30開場)
大阪 平成14年1月19日(土)16:00〜17:30(15:30開場)
参加費: 非会員 2,500円 会員は無料(年会費に含まれる)
定 員: 150名
内 容: 高楼氏の近年の作品に触れながら、暮らしの中の「物語」などについて考える。
問合せ: クレヨンハウス(東京 03-3406-6492 大阪 06-6330-8071)
その他: 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。
 
◎児童図書館研究会 講演会「馬場のぼるさんの絵本の仕事」
講 師: 佐藤英和(こぐま社代表)
場 所: 総合区民会館きゅりあん(東京都品川区東大井5-18-1)第2講習室
日 時: 平成14年1月18日(金)18:30〜20:00
参加費: 非会員 500円(会員は無料)
定 員: 60名
申 込: 児童図書館研究会事務局(TEL/FAX 03-3431-3478)までファクシミリで申し込む。12月28日(金)まで受付。ただし、定員になり次第締切。
問合せ: 植田(中央区立日本橋図書館内 TEL 03-3669-6207)
私市(品川区役所内 TEL 03-5742-6659)
 
◎福音館書店 創立50周年記念講演会「21世紀、子どもの本の可能性」
場 所: 横浜市教育会館(横浜市西区紅葉ヶ丘53)
日 時: 平成14年1月26日(土)14:00〜17:30(受付13:15〜)
入場料: 無料
定 員: 500名
申 込: はがきに「福音館書店創立50周年記念講演会『21世紀、子どもの本の可能性』2002年1月26日(土)横浜会場受講申込HP」と記入し、氏名(ふりがな)、住所、郵便番号、電話番号を明記して、福音館書店宣伝企画課・講演会事務局(〒113-8686 東京都文京区本駒込6-6-3)まで申し込む。12月20日(木)まで受付。ただし、定員になり次第締切。
内 容: 講演「物語というメディア――ことばが紡ぎだす世界―― 」
講師:アーサー・ビナード(詩人)
対談「なぜ子どもたちにむけて物語をかくのか」
講師:富安陽子、おのりえん、たかどのほうこ(いずれも児童文学作家)
コーディネーター:斎藤惇夫(児童文学作家)
その他: 福岡、札幌、広島、仙台でも順次開催の予定。
詳 細: http://www.fukuinkan.co.jp/
 
◎豊山町家庭教育推進協議会 講演会「コージさん・竹内くんへんかもよ」
講 師: スズキコージ(絵本作家、イラストレーター)
竹内通雅(絵本作家、イラストレーター)
場 所: 豊山町社会教育センター(愛知県西春日井郡豊山町大字豊場字和合72)
日 時: 平成14年1月27日(日)14:00〜(13:30開場)
入場料: 無料
問合せ: 豊山町社会教育センター(TEL 0568-28-5335)
その他: 講演会終了後、絵本サイン会の予定。
詳 細: http://www.pinpointgallery.com/koenkai.html

(中野伊都子)

 

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世界の児童文学賞 第17回

―― 信誼幼児文学奨(台湾) ――

〜新しい才能を発掘し、台湾児童書界の未来を支える〜

 

■概要
名 称 : 信誼幼児文学奨(図画書創作奨=絵本部門/文字書創作奨=読み物部門)
対 象 : 中国語で書かれた未出版の作品(絵本、読み物)で、作者の出版歴は不問
創 設 : 1987年
選 考 : 信誼基金会(Hsin Yi Foundation)
発 表 : 毎年1月下旬
関連サイト: http://www.kimy.com.tw/project/200304/hsin-yi_2003/index_1.asp(中国語)
http://www.hsin-yi.org.tw/hsin-yi/hsin-yi_pag4.asp(英語)

 

 主催団体である信誼(シンイ)基金会は、1971年に奨学金団体として創設された。現在は台湾最大の社会福祉団体のひとつとして、出版活動(信誼基金出版社)や各種シンポジウムの運営などを通じ、優れた児童書の普及と、読み聞かせや読書の推進のため、幅広い活動を行っている。

 信誼幼児文学奨は、それらの活動のひとつとして、将来性のある児童書の作家を発掘、養成することを目的に、1987年に設立された。対象作品は一般に公募され、中国語で書かれた未出版作品で作者が16歳以上であれば、プロ・アマを問わず応募できる。授賞されるのは「絵本」と「読み物」の2部門(作品の対象年齢は0歳〜8歳)。審査には、児童文学の研究者や作家などの専門家があたり、各部門で大賞1作、佳作数作を選ぶ。受賞作は信誼基金出版社より出版される。

 台湾の児童書は、英米や日本の作品の翻訳が長く主流を占めていたが、本賞を受賞した作家が活動の場を広げてきたことで、近年ではオリジナル作品の質の向上、充実化が進んでいる。

 

■主な受賞作家
『たね、ぺっぺっ』表紙

●李瑾倫(Lee Chin Lun)

 1965年生まれ。1993年に『子児, 吐吐』(『たね、ぺっぺっ』/宝迫典子訳/PHP研究所)で絵本部門大賞受賞。水彩絵の具と色鉛筆を使った柔らかな色調の絵と、主人公の気持ちの変化を丁寧に追ったストーリーが評価された。1999年には英国の王立芸術大学修士課程を修了、今後の活躍がいっそう期待される。作品は他に『怪叔叔』、『門軽軽関』など。


●林小杯(Lin Shiau Bei)

 1973年生まれ。1999年に『假装是魚』で絵本部門佳作に入賞。軽やかでコミカルなタッチながら緻密な構図で描かれた絵と、思索に満ちた独創的な作風が特徴で、幅広い読者層に人気がある。今最も注目を集めている若手作家のひとり。作品は他に『先跟〈イ尓〉們説再見』、『月光溜冰場』など。日本ではまだ紹介されていない。(〈 〉内は一文字)

(森久里子)

 

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読者の広場

―― 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ――

 

 このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。[email protected] までお気軽にお寄せください。



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  • タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
  • 掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
  • 回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。原則的に編集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

 

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★★★ コンピュータウイルスにご注意ください!! ★★★

 現在、コンピュータウイルスが大流行しています。編集部にも、購読者のみなさまからウイルスメールがたくさん届いています。今回のウイルスは、自己増殖を主目的としていますので、感染者が感染に気がつかないことがあります。まだ対策を取っておられない方、特に Windows 機で Outlook Express をご使用の方は、一度チェックなさるようお勧めします。


●編集後記●

 わたしが「月刊児童文学翻訳」の編集を担当させていただくのは今回が最後になります。98年8月の創刊から約3年半、本当にお世話になりました。ここまで続けてこられたのは、応援してくださった読者のみなさま、一緒にがんばってくれたスタッフのみんなのおかげです。改めて感謝いたします。今後は一スタッフとして、ライターとして、また、翻訳者としてがんばります。来年2月からは、新しい編集人にかわります。生まれ変わる「月刊児童文学翻訳」にどうぞご期待ください。(み)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 大塚典子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 Gelsomina sky SUGO Chicoco ちゃぴ つー どんぐり NON BUN ぱんち ベス みーこ みるか 麦わら MOMO YUU yoshiyu りり Rinko ワラビ わんちゅく
協 力: @nifty 文芸翻訳フォーラム
小野仙内 ながさわくにお


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