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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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特別企画 |
―― 2003年春の児童書出版をみわたして ――
出版業界では、児童書の出版点数が前年度より上回り、売り上げも他のジャンルに比べるとすこしではあるがいいらしい。春までに出版された本をみながら、それらを紹介してみたい。 |
―― ファンタジーブームはまだ続く
ジャンルではファンタジーの出版が抜きんでている。児童書業界に参入する出版社もまず1冊目はファンタジーを出すところが多い。筆頭は早川書房の〈ハリネズミの本箱〉シリーズ。現在8冊を刊行し、ファンタジー以外のものも含まれているが、ハリネズミカラーとでも呼ぶべきものがでてきている。一言でいうと正当派。本のつくりも丁寧で、文字も読みやすい。背表紙についているハリネズミマークは、書店でも図書館でも手にとりやすい目印となっている。またラインナップも、編集者が「とにかく、おもしろい本を!」と言うとおり、どの本も一定の“おもしろさ水準”を保ち、安心して読める。最新作はローレンス・イェップのファンタジー『竜の王女シマー』(三辺律子訳)。米国ではシリーズとなり4冊でているうちの1冊目。東洋的な味付けのあるファンタジーだ。
ソニー・マガジンズもファンタジー作品で児童書に参入した。『アバラット』(クライヴ・バーカー作/池央耿訳)は、絵から先にできたファンタジーで、画集のような豪華な装幀だ。全4巻のうちの第1巻である本作では、伏線が出揃ったところで終わっているので第2巻の刊行が待ちどおしい。次に出したのも、やはりファンタジーで『ミラードリームス(キャサリン・ウエブ作/鳥見真生訳)、英国の14歳の少女が書いた作品。そして、3冊目は英国のダークファンタジー『チェンジリング・チャイルド』(ジュリー・ハーン作/海後礼子訳)。フィリップ・プルマンに師事したという作家が書いたものだ。どの書籍も装幀が豪華でページ数もたっぷりあり、目をひく。
ダークファンタジー『サブリエル』(ガース・ニクス作/原田勝訳)で児童書に参入した主婦の友社も、年内に続編『ライラエル』を刊行予定。冥界のふんいきが独特なオーストラリア人作家の作品だ。
ほかの出版社もみていこう。徳間書店の『アビーと光の魔法使い』(マイケル・モロイ作/内藤文子訳)は、軽やかで読後感がさわやかなファンタジー。いまや1冊で完結するファンタジーは少ないのか、こちらも続編があるとのこと、刊行予定はまだないようだが、ぜひ出してほしい。あかね書房のファンタジーは『盗神伝1 ハミアテスの約束』(M・W・ターナー作/金原瑞人・宮坂宏美訳)。冒険ファンタジーで、盗めないものを盗むという魅力的な主人公が登場する。この作品もシリーズもので続編は7月。どの本も装幀が凝っていて、ページを繰る前から楽しくなる。
―― リアリズムやSF、ヤングアダルト
もちろん、ファンタジーだけではない。さ・え・ら書房が出している作品はどれもリアリズムの力作ぞろいだ。『ノリー・ライアンの歌』(パトリシア・ライリー・ギフ作/もりうちすみこ訳)はアイルランド飢饉を題材に、少女が飢えとたたかいながら生きぬいていく。つづく『もうひとりの息子』(ドリット・オルガッド作/樋口範子訳)はヘブライ語からの翻訳で、民族としては対立している、ユダヤ人の老女とアラブ人学生の交流を描き出す。湾岸戦争を題材に、招集されたシングルマザーと残された子どもたちの生活を描くのは『ソルジャー・マム』(アリス・ミード作/若林千鶴訳)。タリバン政権下で苦しんだアフガン、その地で少女が家族をさがす旅に出るのは『さすらいの旅』(デボラ・エリス作/もりうちすみこ訳)。どれも、読後感に考えさせる「何か」が残る。
理論社の出す海外翻訳ものも理論社カラーが見えてくる。旬の作家が書いた作品を次々と邦訳出版していて見逃せない。2003年度ニューベリー賞オナー作品『ホー HOOT』(カール・ハイアセン作/千葉茂樹訳)もいち早く刊行されている。ほかには、ジャクリーン・ウィルソンの「ガールズ」シリーズ。ウィルソンが、少女たちのリアリティをポップに描き出す。また、ジェリー・スピネッリの最新作『ハッピー*ボーイ』(千葉茂樹訳)は、少年の成長、それに伴う心の痛みを見事に表現した作品だ。「柔らかなリアリズム」という感想が、やまねこ翻訳クラブサイトにある読書室掲示板であがっているが言い得ている。これら翻訳シリーズは装幀もセンスが光り、値段も手頃で手にとりやすい。
偕成社は、近未来SF作品「2099 恐怖の年」シリーズ(ジョン・ピール作/唐澤則幸訳)を6冊刊行した。キッとこちらを見据えている少年の顔が6冊すべての表紙をかざっていて見ごたえがある。そして1冊読むと、ぜんぶ一気に読ませるスピード感。訳者、唐澤氏が「SF活劇のように読んでほしい」と書いているが、まさにそのとおり。逃亡あり、犯人探しあり、物語をおもしろくさせる要素がたっぷりもりこまれている。
集英社は、エドガー賞児童書部門を受賞した『少女探偵サミー・キーズとホテル泥棒』(ウェンデリン・V・ドラーネン作/加藤洋子訳)を刊行。魅力ある少女の名推理が楽しい作品。白水社は、ヤングアダルトを手堅くおさめている。最新作品はポリー・ホーヴァートの『みんなワッフルにのせて』(代田亜香子訳)。ドタバタ喜劇のようで、人生の本質をぐさっと書ききり、不思議な読後感を残す。ヤングアダルトに初進出したのは、主婦と生活社の『テリーの恋』(金原瑞人・田中亜希子訳)。サッカーと恋が連動しているスピード感ある物語。作者は、日本初紹介のアラン・ギボンズ、今年度のカーネギー賞候補作品を書いている。
―― そのほか
柏書房からでている「子どもと本」のシリーズもいい。数十年にわたって読書指導をしてきたマーガレット・ミークの著作、『読む力を育てる』(こだまともこ訳)は、子どもに本を読む機会のある人にはぜひ一読をすすめたい。指導というと、押しつけがましいものを感じるかもしれないが、ひとつのメソッドとして道筋をみせてもらえるのは、学ぶところが多い。また、長年にわたって子どもを目の前にたくさんの本を読んできた人の言葉の重みは大きい。「子どもと本」のシリーズではないが、同じく柏書房からでたエイダン・チェインバーズの『みんなで話そう、本のこと』(こだまともこ訳)もおすすめ。作家としてだけでなく、長年子どもの本の雑誌をつくってきたチェインバーズの仕事をかいま見せてくれる、同書もまたすぐれた読書指導の1冊なのだ。作家としての作品 "Postcards from No Man's Land"(1999年度カーネギー賞受賞、2003年度プリンツ賞受賞)は年内、徳間書店から刊行予定。
昨年からサトクリフ作品の邦訳が続いている。出版時期は、各出版社どこも偶然らしいが、ブームになる勢いだ。ブームの皮切りは、原書房のアーサー王シリーズからだと思われる。サトクリフの書く作品は、古代英国を舞台にしているものが多く、歴史小説とひとことではくくれない、様々な角度からその世界をみせてくれる。主人公がアウトサイダーであったり、苛酷な中で生きぬく様から、心に残るものは大きい。サトクリフの全作品数は70近くあるので、この邦訳ブームはまだ続きそうだ。ほるぷ出版はケルト系のサトクリフ作品を続々刊行し、『黄金の騎士 フィン・マックール』(金原瑞人・久慈美貴訳)、『炎の戦士 クーフリン』(灰島かり訳)が最新作品。原書房も5月に『山羊座の腕輪』(山本史郎訳)、続けて『三つの冠の物語 ヒース、樫(オーク)、オリーブ』(山本史郎訳)と刊行が続く。ほか、評論社からは、『闇の女王にささげる歌』(乾侑美子訳)が、小峰書店からは『アネイリンの歌』(本間裕子訳)が刊行されている。『アネイリンの歌』は、サトクリフ晩年の作品で、今までのサトクリフの作品にある重厚さに、もうひとつ先にある遠い視点が加わっているような不思議な読後感が残る。
―― 絵本
絵本もすこしみてみよう。BL出版は、美しい印刷で定評があるが、『モーゼスおばあさんの四季』(W・ニコラ・リサ編・詩/加藤恭子・和田敦子訳)では、訳者あとがきにも力が入っている。ベーメルマンスの孫が描いた『デリラ やんちゃな子ひつじのおはなし』(ジョン・ベーメルマンス・マルシアーノ作/いしいむつみ訳)もいい。色あいが美しく、ベーメルマンスの筆を思い起こさせる。
セーラー出版は、ジゼル・ポターの絵本を刊行。ジャックとマメの木を題材にした、『ケイトと豆のつる』(おがわえつこ訳)は、リズミカルな訳文で、昔話のもつ楽しさを伝えている。同社からは、ポターの絵本を年内にもう1冊刊行する予定となっている。
金の星社は詩画集『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』(ハンス&モニック・ハーヘン作/マーリット・テーンクヴィスト絵/野坂悦子・木坂涼訳)を出した。平易な言葉で描き出す詩、それに添えられる美しい絵に惹かれる人も多いのでは。
平凡社はフランスの作家、マリオ・ラモのおやすみなさい絵本や、ドイツで長く読みつがれているオルファースの作品を続々刊行している。英語圏以外の絵本で個性的なものを出しているというイメージがあるが、近刊予定はアンソニー・ブラウン作 "Zoo" の邦訳。ブラウンはコアなファンもついているので楽しみにしている人も多いだろう。
スイスに本社があるノルドズッド・ジャパンは2001年6月に日本法人としてできたばかりの出版社。ヨーロッパの色鮮やかでユーモアある絵本『かえるのフリッツ』(ブルーノ・ヘクラー作/ビルテ・ムゥラー絵/河口悟訳)などを出している。パロル舎のフランス絵本は『はなくそ』(ふしみみさお訳)。日本初紹介の作家アラン・メッツの『はなくそ』は、軽快で品のある(?)訳が絵本に華を添えている。光村教育図書は2002年度コールデコット賞オナー作品『ウォーターハウス・ホーキンズの恐竜』(バーバラ・ケアリー文/ブライアン・セルズニック絵/千葉茂樹訳)を刊行。原書そのままの版型で絵の迫力を存分に伝えている。徳間書店はパット・ハッチンスの新作絵本を出した。ハッチンスといえば『ティッチ』など古典的絵本が思い浮かぶ。しかし、まだまだ現役作家。『ピクニックにいこう!』(たなかあきこ訳)は、ほがらかで絵を読む楽しさにあふれている。
―― 受賞作品
インターネットの普及に伴い、各国の賞情報もリアルタイムで入ってくるようになってきた。受賞作品の邦訳も早い。昨年2002年度コールデコット賞に関してはオナーも含めて、4作品すべて邦訳されている。受賞作品以外でも、おもしろい作品は刊行されているのだろうが、選書においてひとつの目安になることはまちがいない。
物語は心を、豊かにそして丈夫にしてくれる。なんともいえない重苦しい空気が、いまの社会に確かにあるが、楽しく読める物語、心に残る物語をこれからも紹介していきたい。
(林さかな)
2003年春の児童書出版をみわたして 展示会情報 セミナー・講演会情報 ローラ・インガルス・ワイルダー賞 読者の広場 MENU |
展示会/セミナー・講演会情報 |
―― 展示会情報 ――
◎東京富士美術館「ワイルドスミス・絵本の世界―おとぎの国のファンタジア」 | |
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所在地: | 東京都八王子市谷野町492-1 |
電 話: | 0426-91-4511 |
会 期: | 平成15年6月15日(日)まで(会期中無休) |
入場料: |
一般800円 大学生・高校生500円 中学生・小学生200円 土曜日は中学生・小学生無料。20名以上の団体割引料金あり。 |
内 容: | ケイト・グリーナウェイ賞受賞作家であるワイルドスミス全作品のうち、絵本50タイトルから原画約162点のほか、油彩画・ポスターなども展示。 |
参 考: | http://www.fujibi.or.jp/wildsmith/tenji.html |
◎軽井沢絵本の森美術館「絵本界の巨匠(マエストロ)たち―世界三大絵本賞展」 | |
所在地: | 長野県北佐久郡軽井沢町塩沢182-1 第2展示館にて |
電 話: | 0267-48-3340 |
会 期: | 平成15年6月23日(月)まで |
休館日: | 火曜日 |
入場料: |
一般800円 中学生・高校生500円 小学生400円 15名以上の団体は10%割引。障害者手帳をお持ちの方は半額。 エルツおもちゃ博物館との共通割引セット券あり。 |
内 容: | コールデコット賞、ケイト・グリーナウェイ賞、国際アンデルセン賞に輝いた絵本界の巨匠たちの作品を展示。センダック、ル・カイン、まど・みちお、赤羽末吉などの作品約120点を紹介する。17世紀からの欧米の絵本の歴史をたどる「欧米絵本のあゆみ―春を祝う絵本―展」も同時開催。 |
参 考: | http://www.museen.org/ehon/news/news.html |
◎米国 The Eric Carle Museum of Picture Book Art「安野光雅 米国巡回展」 | |
所在地: | 125 West Bay Road, Amherst, MA |
電 話: | 413-658-1100 |
会 期: | 平成15年6月29日(日)まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: |
一般4ドル 高齢者3ドル 学生(学生証提示のこと)・子ども(1歳以上)2ドル 家族割引料金あり。 |
内 容: | 絵本画家安野光雅の初めての海外展。『ABCの本』、『旅の絵本』などの代表作の原画を中心に69点を展示。自然・芸術・歴史・旅・文学、あるいは時間・空間・場所をテーマに描かれた作品を見ることができる。 |
参 考: | http://www.picturebookart.org/programs/exhibition.asp |
(清水陽子/笹山裕子)
2003年春の児童書出版をみわたして 展示会情報 セミナー・講演会情報 ローラ・インガルス・ワイルダー賞 読者の広場 MENU |
―― セミナー・講演会情報 ――
◎メリーゴーランド 2003年度レクチャー | |
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講 師: | 清水真砂子(翻訳家) |
場 所: | メリーゴーランド(三重県四日市市松本3-9-6) |
日 時: | 平成15年5月18日(日)14:00〜 終了後サイン会を予定 |
参加費: | 前売 2500円 当日 3000円 |
定 員: | 150名 |
申込み: | TEL(0593-51-8156)担当 森 |
詳 細: | http://www.merry-go-round.co.jp/ |
◎大阪府子ども文庫連絡会 2003年度児童文化講座(全10回) | |
講 師: |
第1回 新宮晋(造形作家) 第2回 野坂悦子(翻訳家) |
場 所: | 大阪府立中央図書館(大阪府東大阪市荒本北57-3 TEL 06-6745-0170) |
日 時: |
平成15年6月17日(火)10:00〜12:30講演会 14:00〜交流会 平成15年7月8日(火)10:00〜12:00講演会 13:30〜交流会 3回目以降の予定・内容は問合せる。 |
参加費: | 全講座受講 会員4500円 会員外7000円 空きがあれば1講座2500円 |
定 員: | 310名 |
申込み: | TEL(0593-51-8156)担当 森 |
詳 細: | 問合せ先に受講申込み書を請求し、郵送・送金。 |
締切り: | 平成15年5月21日(水)必着 |
問合せ: | 大阪府子ども文庫連絡会 担当 白井 TEL&FAX(0724-43-1213) |
◎大阪府立国際児童文学館 講座「子どもと本をよむ」 基調講演「本はステキな友だち」 | |
講 師: | 中川正文(国際児童文学館館長) |
場 所: | 大阪府立国際児童文学館講堂(大阪府吹田市千里万博公園10-6) |
日 時: | 平成15年6月3日(火) 13:30〜15:30 |
参加費: | 無料 当日参加自由 |
問合せ: | 大阪府立国際児童文学館 TEL(06-6876-8800) |
詳 細: | http://www.iiclo.or.jp/event/special/kouzakouenkai.htm |
◎大阪YWCA専門学校 子どもと子どもの本の講座 「訳者とたのしむ児童文学」(全6回コース) | |
講 師: | 第1回、第2回 上田真而子(翻訳家) |
場 所: | 大阪YWCA専門学校(大阪府大阪市北区神山町11-12) |
日 時: |
第1回 平成15年6月23日(月) 第2回 平成15年7月14日(月)ともに 13:00〜15:00 |
参加費: | 全6回 15000円 部分受講(回数×2500円+1000円手数料) |
定 員: | 30名 |
申込み: | TEL(06-6361-2955)/FAX(06-6361-2997)/E-mail([email protected])で予約の上申込む。 |
詳 細: | http://www.ywca.or.jp/osaka/educate/children.htm#jidou |
その他: | 会員割引あり。3回目以降は上記サイトで確認のこと。 |
(竹内みどり/早川有加)
2003年春の児童書出版をみわたして 展示会情報 セミナー・講演会情報 ローラ・インガルス・ワイルダー賞 読者の広場 MENU |
世界の児童文学賞 第23回 |
―― ローラ・インガルス・ワイルダー賞(アメリカ) ――
〜アメリカ児童文学の功労者に贈られる賞〜
名 称 : | ローラ・インガルス・ワイルダー賞(The Laura Ingalls Wilder Medal) |
対 象 : | アメリカで作品を発表し、長年にわたって児童文学に多大な貢献をした作家または画家 |
創 設 : | 1954年 |
主 催 : | 米国図書館協会児童部会(American Library Association, The Association for Library Service to Children) |
選 考 : | ローラ・インガルス・ワイルダー賞委員会(ALSC (Laura Ingalls) Wilder Award Committee) |
発 表 : | 隔年1月(次の発表年は2005年) |
関連サイト: | http://www.ala.org/ala/alsc/awardsscholarships/literaryawds/wildermedal/wildermedal.cfm |
ローラ・インガルス・ワイルダー賞は、第1回受賞者であるローラ・インガルス・ワイルダーにちなんで名づけられた。審査基準は、過去25年以内に子ども向けの作品の創作に携わっていること、10年以上にわたって作品が読まれていることなどである。ジャンルの代表となるようなもの、新しい型を定着させたものなど、アメリカの児童文学において重要な位置を占める優れた作品を生み出している点が重視され、その作家または画家の業績全体も考慮される。候補者の国籍や居住地は問われず、死後に候補者となることもある。選考は、前年12月31日までに推薦のあった候補者を対象に、公立図書館司書など5名からなるワイルダー賞委員会によって行われる。創設当初は5年ごとに授賞が行われていたが、1980年からは3年ごとに、さらに2001年からは2年ごとになった。
◆2003年受賞者(2003年1月27日発表)
●Eric Carle(エリック・カール) 『はらぺこあおむし』(もりひさし訳/偕成社)など、60作以上にのぼる幼児向け絵本を発表している絵本作家。視覚だけでなく触覚や聴覚も使って楽しめる革新的な作品の数々は、世界中の子どもたちから親しまれている。 (参考サイト:http://www.eric-carle.com/) |
◇過去の主な受賞者
○Milton Meltzer(ミルトン・メルツァー) 2001年受賞者。少数民族や労働者階級の人々の歴史を取り上げたノンフィクション、政治や芸術などさまざまな分野の第一人者の伝記など、100冊近くの作品を発表している。邦訳に『大航海時代の先駆け コロンブスは何をもたらしたか』(渡会和子訳/ほるぷ出版)、1976年ボストングローブ・ホーンブック賞ノンフィクション部門オナー(次点)となった『ネヴァ・トゥ・フォアゲット』(小柴一訳/新樹社)がある。 ○Elizabeth George Speare(エリザベス・ジョージ・スピア) 1989年受賞者。寡作ながら、1959年の『からすが池の魔女』(掛川恭子訳/岩波書店)と1962年の『青銅の弓』(渡辺茂男訳/岩波書店)でニューベリー賞を、1983年の『ビーバーのしるし』(犬飼千澄訳/ぬぷん児童図書出版)で同賞オナー(次点)を獲得した。植民地時代のアメリカ東部や、ローマ帝政時代のイスラエルなどを舞台に、民族的・宗教的な対立のなかで葛藤する青少年の姿を描いた。 その他、マーシャ・ブラウン(1992年)、モーリス・センダック(1983年)、ベヴァリー・クリアリー(1975年)など、日本の読者にもなじみのある作家や画家が多く受賞している。 |
(須田直美)
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読者の広場 |
―― 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ――
先月の本誌書評編「子どもに語る」に爽子さんより感想をいただきました。全国的に増えている読み聞かせ、いろいろ感じるものが多いと思います。
「子どもに語る」“自分のスタイルを探して〜英語の原書も読んでみよう”が、今のわたしには悔しいほどにうらやましい話でした。わたしも町の小さな学校で本のよみきかせを5年ほどしています。 先日、今年度の打ち合わせがありました。その場でどうしても他のメンバーに伝えたいひとことを言ってみました。「自分の好きな本ではなく、こどもの好きな本をえらぼう」、と。 結果、非難の嵐でした。こどもに媚びる必要はないだの、自分が好きでなければ心を込めて読めないだの。とどめは校長先生の「つまらない話でも我慢して聞ける子になってほしい」、「話をしている人を姿勢を正してしっかり見る(礼儀作法)ことを学ぶのも学校教育のねらい」。 いままで、こどもを喜ばせたくて本を読んできたわたしには、ショックでした。月に一度の朝の10分ほどの時間は、勉強とは関係のない楽しい時間だと思っていたのに。22日に第1回目のよみきかせがあり、わたしは5年生のクラスで読みます。高橋さんのまねをして絵本の日本語版・英語版を両方読むのもおもしろそう。『ガンピーさんのふなあそび』の原書、図書館にあるかしら? |
このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。[email protected] までお気軽にお寄せください。 |
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◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆
●編集後記●
本は読んでも読んでも、まだ読みたい本があります。(さ)
発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 竹内みどり(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
編集人: | 林さかな(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
企 画: | 蒼子 河まこ キャトル きら くるり さかな 小湖 Gelsomina sky SUGO Chicoco ちゃぴ つー 月彦 どんぐり なおみ NON ぱんち みーこ みるか 麦わら MOMO ゆま yoshiyu りり りんたん ワラビ わんちゅく |
協 力: |
出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内 ケンタ ち〜ず ながさわくにお |
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