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※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!
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2004年6月15日発行 配信数 2340
◎注目の本(邦訳読み物):『ロラおばちゃんがやってきた』 フーリア・アルバレス作 ◎注目の本(未訳絵本):"The Pea and the Princess" ミニ・グレイ文・絵 ◎注目の本(未訳絵本):"The Wolves in the Walls" ニール・ゲイマン文/デイヴ・マッキーン絵 ●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。 |
注目の本(邦訳絵本)
―― ドラゴンが大好きな少年の、すてきな冒険物語 ――
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『ドラゴン マシーン』 『ロラおばちゃんがやってきた』 "The Pea and the Princess" "The Wolves in the Walls" MENU |
注目の本(邦訳読み物)
―― 雪の町にやってきた、カリブ海の太陽 ――
初めてこの本の表紙を見たとき、とても印象的なイラストに目を奪われた。髪にハイビスカスを飾った、華やかなスカートの女性の後ろ姿と、白い雪景色との鮮やかなコントラスト。素敵な表紙からどんな物語だろうと、興味がわいた。 ニューヨークからヴァーモントに引っ越してきたばかりで、新しい生活に不安がいっぱいの9歳のミゲル。両親の離婚で、大好きなパパと離れて暮らすことになったし、ここではヒスパニック特有の小麦色の肌が目立ち、なかなか友達もできない。そんな時、ママが故郷のドミニカに住むロラおばちゃんを呼び寄せた。 ミゲルたちが初めて会ったロラおばちゃんは、不思議な魅力にあふれていた。英語があまり話せないのに、すぐに誰とでも仲良くなれる。おばちゃんがスペイン語で話す物語は、アメリカで生まれ育ったミゲルたちにはよく分からない。でもなぜか、おもしろくて引き込まれる。おばちゃんは料理に魔法をかけているのか、食べるといいことが起こる。ミゲルはリトルリーグに入るという願いを実現するため、毎日おばちゃんの料理を食べて、入団テストの日には応援に来てもらう。観客席でおばちゃんがラッキーアイテムの黄色いスカーフを振ると、ミゲルは思い通りの打撃ができた。 おばちゃんはとても楽しい人。だけどミゲルは、風変わりなおばちゃんを恥ずかしく思うこともある。それに、一緒に暮らしたいのはやはりパパ。でも、ロラおばちゃんと一緒にさまざまな経験をするうちに、ミゲルの思いは次第に変わっていく。 物語は寒い季節に始まる。色彩にも乏しく、冷たい空気はまるでミゲルたちの心の中を象徴するよう。そこにやってきたのが、太陽のようなロラおばちゃん。大らかで優しく、出会ったすべての人の気持ちを幸せにする、魔法のような力を持っている。おばちゃんから愛情を注がれるミゲルたちは、太陽に向かってまっすぐに伸びていく草花のように成長してゆくに違いない。 読み終わったあとには、心がポカポカと温かくなっていた。まるで、ロラおばちゃんが私たち読者にも魔法をかけたように。私もこんなおばちゃんになりたい、すべての人を幸せで包めたら――、そう思った。 (井原美穂)
【作】フーリア・アルバレス(Julia Alvarez) 1950年米国生まれ。生後すぐにドミニカ共和国に渡り、9歳まで過ごした後、独裁政権を逃れて再度米国へ移住。1991年に小説 "How the Garcia Girls Lost Their Accents" を発表、作家として注目を集めた。2004年に "Before We Were Free" でラテン系の作家、画家に贈られる全米児童図書協会の Pura Belpre(ふたつめの e にアクサンテギュ)賞を獲得。本書が初の邦訳作品。 【訳】神戸万知(ごうど まち)1969年東京生まれ。ニューヨーク州立大学卒業。白百合女子大学大学院博士課程修了。米国でスペイン語を学んだことなどから、アメリカのヒスパニック系の児童文学に興味を持つ。『四月の野球』(ギャリー・ソト作/理論社)、『アグリー・ガール』(ジョイス・キャロル・オーツ作/理論社)などの翻訳書がある。 【参考】◆フーリア・アルバレスの公式サイト http://www.alvarezjulia.com/ ◆ピカピカな毎日(神戸万知公式サイト) http://homepage1.nifty.com/pika_pika/index.html
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注目の本(未訳絵本)
―― 小さな豆の大活躍を、ユーモアいっぱいの絵が語る ――
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注目の本(未訳絵本)
―― オオカミたちが出てきたら、もうおしまいだ……。 ――
家の壁の中から、何かが動きまわるような音が聞こえる。壁のすきまから、ぎらぎらした眼がのぞいてる。ルーシーには正体がわかった。壁の中にオオカミがいるんだ。母さんも父さんも弟も、「ネズミでしょ」「想像しすぎ」と、ちっとも信じてくれない。なのに、みんなして「もしオオカミが出てきたら、もうおしまい」と不吉なセリフをいってくる。なにがおしまいなの? だれがそんなこといったの? ちゃんとした答えはだれも教えてくれない。 ついにある真夜中、音がどんどん大きくなって……オオカミたちが、壁から出てきた! 大あわてで家を逃げ出す一家。“もうおしまい”だから、北極で暮らそう、砂漠へ行こうなどと、あきらめきって突拍子もないことを口にする家族に、ルーシーは抗議する。さてルーシーは、おそろしいオオカミたちから我が家を取り戻し、だいじなパペットのブタを救うことができるのだろうか……。 お話は微妙な言い回しが面白いナンセンスもので、昔話の定番にならい、きちんとオチもある。だがこの絵本の魅力はやはり、絵。その強烈な迫力は、なかなか言葉では伝えにくい。全体の色調はダークなセピアとゴールドを基本とし、どのページにも暗い闇が影を落としている。写真や文様のコラージュ。コンピュータを使った複雑な色彩加工。金属はてらてらと輝き、花は不安定な描線となって妖しく流れる。べったり塗りこめられた人物や背景とは対照的に、荒々しいペンタッチで表現されたオオカミ。木の人形めいた人間の顔はかなり恐いし、ずらっと並べられたジャムの瓶のコラージュまで、なぜかなまなましくて不安をそそる。だがその恐さの中に、とぼけた「コワカワイイ」感じもあるのだ。型破りな不気味さをもつ本作が、伝統あるケイト・グリーナウェイ賞においてどう評価されるかに注目したい。 画家マッキーンは、文を担当したゲイマンのコミックや小説の多くに、迫力ある表紙絵を提供していて評価が高い。児童書『コララインとボタンの魔女』(金原瑞人・中村浩美共訳/角川書店)の原書の挿し絵、絵本 "The Day I Swapped My Dad for 2 Goldfish" の絵も描いている。 (菊池由美)
【文】Neil Gaiman(ニール・ゲイマン) 1960年、イギリス生まれ。コミック「サンドマン」シリーズの原作者として有名。ダーク・ファンタジー小説の評価も高く、ファンタジーの主要な賞を多数受賞。『コララインとボタンの魔女』でもネビュラ賞を受賞した。アニメ『もののけ姫』英語版脚本を執筆している。現在はアメリカ在住。 【絵】Dave McKean(デイヴ・マッキーン)1963年、イギリス生まれ。多くのCDや書籍、コミックのイラストや写真を手がけている。映画製作にも携わり、映画「ハリー・ポッター」のキャラクターデザインのいくつかを担当。監督、原案、デザインを担当した映画 "Mirror Mask"(ゲイマン脚本)が本年公開予定。イギリス在住。 【参考】 ◆ニール・ゲイマンの公式サイト http://www.neilgaiman.com/ ◆HarperCollins 内のニール・ゲイマン、デイヴ・マッキーンのサイト http://www.mousecircus.com/mousecircus/flash/mc_flash.html
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●編集後記●
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編集人: | 赤塚きょう子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
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